投稿を促す“心理的”インセンティブ

現在、クックパッドの有料会員は160万人超。「ユーザーファースト」をうたうクックパッドでは、限られた時間での日々の献立づくりという使用価値をうまく見据えた機能を、有料会員に提供している。だが、これらの有料会員向けの機能が生きるのも、クックパッドに大量のレシピの蓄積があればこその話である。

このレシピ投稿を促す新機能の導入が、第2の改革である。06年頃、つくってみた感想を、写真を添えてレシピの投稿者にフィードバックできる「つくれぽ」という機能が追加された。投稿者と利用者がレシピのコメントを書く欄を転用してコミュニケーションを取っていることに着目、その手間を減らしたいとの思いで導入したという。

従前のままでも、つくった感想や料理の写真を投稿者に伝えることはできた。しかし感想を写真付きで伝えるためには、複数の操作を組み合わせる必要があった。「つくれぽ」を導入したことにより、クックパッドの利用者は、簡単な操作で「美味しかったよ」と、写真付きのメッセージを投稿者に送れるようになった。

実際に導入してみたことで、「つくれぽ」には幾つかの効果があることが見えてきた。第1に、「つくれぽ」のコミュニケーションは、レシピの投稿者のさらなる投稿への意欲を高める。第2に、送る側にとっても、「つくれぽ」の履歴は気に入ったレシピの記録となり、先の保存フォルダ機能の補完となる。第3に、「つくれぽ」が付くことで、レシピのコンテンツとしての魅力が高まる。

レシピ投稿のインセンティブを、クックパッドは複合的に組み立ててきた。創業時よりクックパッドでは、誰もが簡単に書き込めて、わかりやすいレシピができあがる記入フォームの開発と提供に力を入れてきた。さらにレシピの投稿者は、投稿したレシピの閲覧数を確認することもできる。そこから生まれる達成感も、さらなる投稿を促す。

この使いやすさと達成感に加え、利用者とのコミュニケーションが取れる「つくれぽ」は、嬉しさや喜びをレシピの投稿者にもたらす。クックパッドは、以上のような投稿者の気持ちに寄り添う複合的な心理的インセンティブで、投稿を促してきた。

これに対して10年に参入した楽天レシピは、ポイント付与という経済的インセンティブで追い上げを狙った。しかし、蓄積できたレシピ数は、5年以上が経過した現在でも100万品程度と、クックパッドの半数に満たない。