さらに、これから侃々諤々の党内議論を仕切るにあたり、強力な援軍も現れた。まず、農水副大臣に気心の知れた2人が就任したことだ。伊東良孝、齋藤健両衆院議員はいずれも進次郎氏と同じ09年初当選。新人時代からたった4人の同期で勉強会「四志の会」をつくり、切磋琢磨してきた関係にある。つまり、進次郎氏は政府側に太いパイプを有していると見ていい。

特に齋藤氏は経産官僚の頃、小泉構造改革に従事した1人で、前任の農林部会長でもある。13年9月に就任した際は農林族から驚きの声も上がったが、その“免疫”があるため進次郎氏の抜擢は物議を醸すこともなかった。今後、齋藤氏が頼れるメンター役となることは間違いない。

また、今回、内閣官房参与として官邸に詰める飯島勲・元首相秘書官の存在感も漏れ伝わってきた。純一郎氏の秘書を長く務めた飯島氏は、現在の小泉事務所とは一線を画している。しかし、これまでも進次郎氏から相談を持ちかけられると親身に応じてきた。その彼が進次郎氏の焦りを察知し、事務所に残るベテラン秘書と連携して農林族の重鎮たちへ根回しするなど、進次郎氏に知恵をつけているようなのだ。

こうしたサポートが功を奏してか、絶妙なバランス感覚で部会長代理に1期後輩の2人の衆院議員を配している。その1人が福田達夫衆院議員だ。純一郎氏の師匠、福田赳夫元首相の孫で、父・康夫元首相の首相秘書官を務めた経験もある。“総理の息子”という威光を持ち、福田氏が属する最大派閥の清和会(細田派)へのパイプ役ともなりうる。もう1人は、山形2区選出の鈴木憲和衆院議員だ。14年末の衆院選では進次郎氏が複数カ所で応援演説をこなしたほどの間柄でもあるが、農水官僚出身の彼は慎重派議員約260人でつくる「TPP交渉における国益を守り抜く会」の事務局次長も務め、農林族とのパイプ役を担うと見られる。

34歳の進次郎氏にはない実務経験と党内人脈を兼ね備える後輩議員を従えて臨む農林部会は、土日月を除く平日に毎日会議を開く一方、部会長ら役員は休日を返上して全国の農業関係者へ説明に回る「キャラバン」を行う。