「一か八かの手術を他は引き受けませんよ」

それに対して医師団は、次のように淡々と話したのだそうだ。

「正直申し上げて、これだけ進行しているがんとなるとなかなか引き受けてくれません。病院によっては助かる人だけ預かるところもあって、そういう病院はますいさんの症状のような一か八かの手術はしたがらないのです」

ますいの最後の願い。それは摘出するのは子宮のみにしたいということ。

「卵巣を1センチでも残したい。卵巣さえあれば人工授精で子供を持つことができる。この若さで女性ホルモンを全部持っていかれるのは辛すぎます……」

そんな女性としての切なる申し出は、命を優先する医師団によって却下された。子宮、卵巣、そしてリンパ節。それらを取り除く手術、ますいの言葉を借りれば「切腹して、臓器を1回出して、洗って、切れるところは切って、もう1回ふたをする」ことには無事成功した。だが、本当の闘いはこのときにスタートする。