全国提携2200店以上でサービスを開始

2015年5月、喜久屋は全国のクリーニング業者45社と提携、店舗数で2200店舗以上(2015年9月8日現在)というネットワークを構築し、無料保管サービス付きネット宅配クリーニングサービス「リアクア」を発表した。クリーニング代が3000円以上であれば、往復送料は無料、最短4日で自宅へ集荷・配送してくれる。希望をすれば最長半年間無料で保管し、延長保管も可能だ。また、ネットからの申し込みだけでなく、電話での依頼も可能、というサービスだ。

ウエブサイトとサービス全般は喜久屋がマネジメントし、集荷配送はヤマト運輸に委託した。中畠は今後、店頭よりもネットを利用した依頼が増えるものと見ている。というのも、すでに20万人以上の利用があるイークローゼットにおいてはリピート率が80%以上あり、今後10年間でネット経由が注文全体の30~40%を占めると想定しているからだ。

喜久屋は従来の単一的なクリーニングサービスからワンストップ型の「衣類生活支援総合サービス」を目指す。

「売り上げやお客さまの数が伸びないなら、それは提供するサービスや商品に何かが足りないからです。お客さまや社会が必要と思えば、売り上げは勝手に伸びていく。もはや顧客の囲い込みのような発想では通用しません」と中畠は語る。

中畠が父の創業した喜久屋を継ぐために入社したのが1985年。92年には29歳ながら専務として経営を実質的に担うようになったが、その年から市場は縮小を始めた。

父、憲治が56年に創業した喜久屋は取次店をチェーン化して拡大し、最盛期には300店を超える大手になった。取次店とは受付だけを行う店で、多くは米屋などが副業で行っていた。だが、この取次店も98年をピークに減っていった。

中畠は危機感を持ち、専務になった年に、何のために喜久屋が存続するべきか経営理念を考えた。複雑なものは社員も共感できない。シンプルにいこうと、思いついたのが「喜久屋でよかった!」。顧客も従業員も取引先も地域社会も喜久屋と縁がある人たちは喜久屋でよかったと喜んでもらいたい。「三方よし」の精神である。

そこから、中畠はトヨタ生産方式など生産の合理化や品質管理を勉強した。まず手をつけたのが業務の平準化だ。

クリーニング業界は4月と10月がピークで、2月と8月に落ち込む。2月の注文は4月の半分程度になる。また、週単位で見ると、土日にその週の5割もの注文が入る。しかも、即日あるいは翌日仕上げが業界の常識になっていたため、ピークに対応するには設備もスタッフも過剰になり、逆に平日は工場も人も遊んでしまう。

しかし、一生懸命、即日や翌日に仕上げても引き取りに来ない客も多い。引き取ってもらえないと保管スペースがなくなるので、早く引き取った人には割引サービスを行うような悪循環になっていた。