リッツ・カールトンのラインナップは「従業員教育に効果的」との定評がある。確かに従業員たちは同社のフィロソフィーについて活発に論じ合い、サービスの根本について考えを深める。だが、そうした論じ合いは他社が簡単に真似できるものではないだろう。

唯一、他社が導入しても効果的と思われるのは、「WOW(感動)ストーリーの紹介」ではないだろうか。「昨日、あなたはお客さまに大変満足していただけましたか?」という問いかけに対して、「感動を提供した」従業員がみんなの前でストーリーを報告するものだ。

ある日のリッツ・カールトン大阪のレストランにおけるラインナップでは男性ウエーターが次のような話をした。

 「うちのレストランによく来店されているご夫妻がいらして、私はいつもおふたりのサービスを担当していました。昨日の夕方、バーカウンターになぜか奥様がおひとりでいらっしゃったので、気づいた私はご挨拶をしました。すると、奥様はこうおっしゃったのです。『まあ、ありがとう。実は主人を亡くして……。今日は1人で来ました。ここにいると主人のことを思い出すんです』。私は脇に立ち、奥様から旦那様の思い出話をおうかがいしました……」

要するに「職場で出会った、ちょっといい話」の紹介だ。だが、聞いている従業員にとっては、恰好のケーススタディーになる。一方、話す側は自慢話にならないように構成しなくてはならない。「WOWストーリーの紹介」は聞く側、話す側の両者にとって、実践的なサービスの研修となっているのだ。

世の中に朝礼は数多い。しかし、たいていは上司による一方的なスピーチかスローガンの唱和にとどまっている。

リッツ・カールトンのラインナップから学べることは、朝礼をするのならば参加者にとって面白く、しかもためになる内容にすることだと思う。