「145点」との訣別

じつは、その日の夜、キンちゃんは日本のラグビー仲間から祝福の電子メールをもらった。日本代表の先輩、44歳ながらまだ現役、タケさんこと伊藤剛臣(釜石シーウェイブス)からだった。メールにはこう、あった。

<145点の記憶を消してくれてありがとう>

日本代表は1995年のW杯南アフリカ大会でニュージーランドに17-145で大敗した。もちろんW杯ワースト記録だった。タケさんは日本代表として99年のW杯英国大会に出場した。カーディフのパブで酔った見知らぬ外国人観戦客から「145点の悪夢」の話を持ち出され、口を開けて笑われた。

タケさんは悔しくて悔しくてたまらなかった。その悪夢を消し去る快挙を後輩たちがやってくれた。キンちゃんはすぐにこう書いて、返信メールを送ったそうだ。

<タケさんのおかげで今のオレがあります。タケさんに鍛えてもらったおかげです。こちらこそ、ありがとうございます>

これで英国のパブにいっても、ジャパンといえば、「南アフリカを倒した国」ということになる。筆者も英国のパブで何度、祝福のビールを見知らぬ外国人からごちそうになったことか。今回のジャパンは日本ラグビー界に誇りを取り戻してくれたのである。