1人の接客がダメなら全部ダメ

「接客好感度ランキング」のアンケート結果(*)では、このスタバにほぼ肩を並べる評価を得たのが、老舗スーパーのイトーヨーカ堂(以下ヨーカ堂)。スタバほど接客を重視しているイメージはないが、客の期待を上回る接客を提供しているようだ。人材育成部の田代和則氏は次のように説明する。

*飲食店 http://president.jp/articles/-/13534 小売店 http://president.jp/articles/-/13525

「身だしなみや接客話法などを細かく記した『入社時研修テキスト』があり、パートも含めたすべての社員は入社時に15時間の研修を受けます。研修後は、『社員のしおり』というポケット版を持ち歩き、随時参照するのです。社是と商売の基本4原則は大事にしています」

ヨーカ堂の社是は「信頼と誠実」であり、商売の4原則とは「フレンドリー(笑顔)、クリンリネス、鮮度、品ぞろえ」を指す。「フレンドリー」が筆頭なのが特徴的だ。

2012年からは「セルフサービスから接客サービスへ」を掲げ、衣類などを購入した客への「お見送り」といった百貨店並みの接客を目指している。

ヨーカ堂の執行役員であり、アリオの責任者を務める赤羽英彦氏は、一所懸命から発想した「一笑店明」という造語を各店舗で伝えているという。

「一人ひとりの笑顔が店を明るくするのです。99人が笑顔でも最後の1人の接客がまずければお客様が嫌な思いをしてしまいます」

厳格なマニュアルの順守を強制されても、心のこもった「いらっしゃいませ」は決して言えない。スタバやヨーカ堂のように手間暇をかけて褒め育てるのが接客力向上の近道なのだ。