「酔った勢い」なんて言い訳は通用しない

また出世する人に共通するのは、自己管理ができていること。ビジネスマンのマナーとして、特に身だしなみには気を使うべきだという。

「たとえば臭くないように気をつけること。夏、汗をかいたら、人に会う前に制汗スプレーを一吹きする、臭いの強いものを食べたら歯を磨く、足が蒸れないよう通気性のいい靴下をはくなど、他人に不快感を与えないよう気を配れないとだめですね」

自己管理という意味では、肝心なときに風邪をひいてしまうような人も、出世コースから外れると言えるだろう。

「クラブ由美」の客層は紳士ばかりだと思うが、「こんな客は出入り禁止だ」という人はいるだろうか。

「他のお店の話ですが、女の子目当てで通っていたお客様がいらしたんですね。それがあるとき 『なんでこんなに高いんだ』って、お会計に文句をつけ始めたんだそうです。どうやらフラれて急に態度を変えたみたいで。私なら『そんなに女の子とお付き合いしたいのなら、もっと手っ取り早いところに行ったほうがよろしいんじゃないですか』ってはっきり言ってしまいますけどね」

なかには脈ナシと判明したとたん、飲み代を踏み倒す悪質な輩もいるという。相当な金額を費やしたのに見返りがないとわかって、急に惜しくなったのだろうが、それこそ「無粋」で「垢抜けない」ことなのだ。

「別にうちは恋愛禁止ではありませんし、夜の銀座は女の子とちょっとした恋愛気分を楽しむ場所でもありますが、たくさんお金を落としたからといって女の子を自由にできるというのは勘違いですよ」と由美ママは釘を刺す。

日本では酒のうえでの失敗を水に流すとか、大目に見るといった傾向がある。しかし由美ママは、「酔ったときこそ、その人の本質が出る」とキッパリ。

「よく『悪い人じゃないけど酒が入ると人が変わる』なんて言われるような、酒癖が悪い人っているでしょう。でも酒席での振る舞いにはその人の本質が表れるんですよ。ですから“酔った勢い”なんて言い訳は通用しません。お酒の飲み方にも品格がほしいですね」

ちなみに「クラブ由美」では、由美ママが好きではないという理由から下ネタ禁止。くれぐれも一流の場にふわさしい、スマートで粋な飲み方を心がけたいものである。

「クラブ由美」オーナーママ
伊藤由美
(いとう・ゆみ)
23歳で「クラブ由美」を開店。以来、“銀座の超一流クラブ”として政財界の重鎮や文化人など名だたるVIPたちから支持され続けている。最新刊は『スイスイ出世する人、デキるのに不遇な人』(ワニブックス)。
(工藤睦子、飯田安国=撮影)
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