先を見ず、次も勝ちにいくだけ

3戦目のサモア戦に快勝したときは、南ア戦のときのような興奮はなかった。言葉に実感を込める。

「まずは南ア戦で国民の期待を少しこちらに向けることができて、スコットランド戦で不甲斐ない形で終わってしまいました。でも、このサモア戦の勝利で我々の力というものをしっかり国民の皆様にアピールできたのではないかと思います」

確かに疲労の蓄積はあるだろう。だが、五郎丸は「W杯は楽しい」と言う。

「開幕する前までは、これまでに感じたことのないような重圧がありましたけど、(初戦の)南ア戦の2日前ぐらいから、すっきりした気持ちになりました。実際にこう、国民からの期待を背負った中で、我々のなりたい姿になれているので、そういう意味では非常に楽しいですね」

目標は決勝トーナメント進出である。だが、勝ち点をみると1次リーグ最後の米国戦(11日)に勝って3勝としても、目標達成は厳しい状況にある。会見のたび、他チームとのポイント争いの質問がでる。でも日本代表の副将は自分らがコントロールできないことには関心はないのだろう。

「何回も言いますけど、僕は先を見てないですよ。次も勝ちにいくだけです。しっかり準備をして勝ちにいきます」

必勝あるのみ、である。PGを狙うキックの時と同様、五郎丸はまっすぐ前を見つめていた。目に力があった。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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