2015年10月16日(金)

海苔が70種類!? 小さな町のスーパーに行列ができる理由

dancyu 2013年10月号

文・大宮冬洋 撮影・山口典利

愛知県蒲郡(がまごおり)市に、すごい品揃えのスーパーがある。たとえば海苔は、70種類。板状の焼き海苔から味つけ海苔、フレーク状のもみ海苔まで、さまざまなタイプがずらりと並ぶ。現地でしか買えないようなご当地ものもちらほらと交じる。調味料や菓子、インスタントラーメンに至るまで、リーズナブルな定番商品から高級な贈答品までが全国から集められているのだ。

ほかのスーパーでは滅多にお目にかかれない「未来めむろうし」。霜降り牛とは一線を画し、健康的な赤身の旨さが際立つ。岐阜県の飛騨牛農家も、自家用にこっそり買いに来ているそう。

なかには、珍しい産地直送品も。北海道の「未来めむろうし」は、抗生物質や遺伝子組み換え作物を使わない飼料で育てるホルスタイン種で、道外ではほとんど手に入らないという。プライベートブランドも多く、原料調達から製造まで手を抜かない。看板商品の「生クリーム食パン」は、気温の低い輸送ルート(カナダから北海道経由)にも配慮した小麦を使い、乳化剤やマーガリンを使わずに焼いている。

ここは、愛知県東三河地域に5店舗を展開する食品スーパー「サンヨネ」蒲郡店。蒲郡市は、愛知県では15番目の市で、人口は8万人強。サンヨネがあるのは、海沿いののどかな地域だ。同じ市内にはイオンやアピタなどの大手スーパーもあるが、サンヨネは圧倒的な品揃えで、舌の肥えた客の人気を集め続けている。平日でも開店前には行列ができ、週末には車で1時間以上かかる名古屋方面からも客が押し寄せる。240台分の駐車場が満車になることも少なくない。

海産物問屋としての歴史が長く、創業は明治25年。食品スーパーとしても40年以上の歴史をもち、会社設立以来、黒字・無借金経営を続けている。徹底した堅実ぶりで、新店オープン時であってもチラシを配布しない。ポイントカードもない。コストを削減し、良い商品を安い価格で提供するためだ。

ただし、人件費は削らない。店頭で対応する従業員の人数は多く、みんな楽しそうに働いている。客と言葉を交わしながら懸命にメモをとっている姿も。聞けば、客の要望を次の仕入れに反映させるらしい。惣菜コーナーで唐揚げを手に取り、「半分ぐらい食べたい」と言う客がいれば、量も値段も半分のパックを手早くつくる。レジの担当者は手を高速で動かしながらも、自然な笑顔で声をかけている。

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大宮 冬洋