【飯島】横綱は、日本の歴史でいうなら三菱グループの創業者・岩崎弥太郎のような存在だと思う。弥太郎は明治維新のときに大活躍し、日本の発展のために尽くした人。「所期奉公の精神」(期するところは社会への貢献)を掲げて、事業を拡大していった。私利私欲でお金儲けをするのではなくて、愛国心をしっかり持ってビジネスの世界に乗り出している。

【朝青龍】確かに愛国心という気持ちは非常に強い。そして、モンゴルと日本の架け橋になりたい。今、一番力を入れているのは蕎麦の栽培です。

【飯島】蕎麦栽培というのは、横綱のイメージからほど遠いね。

【朝青龍】農業は素晴らしい産業です。モンゴルは、レアメタルなど鉱物資源が豊富ですが、そういった天然資源はいつかはなくなってしまう。でも、農業はずっと続けられるのです。

東モンゴルに20万ヘクタール(東京ドーム4万2500個分個分)の土地がありまして、土の状態を調べて農業地としてしっかりと整備して、広大な蕎麦畑をつくりました。日本が持っている世界最高のナノテクノロジー技術を導入して調査や実験をしました。北海道から蕎麦のタネを輸入して、最高に美味しい蕎麦が実りましたよ。日本の食べものは美味しい。モンゴルでも、ブランドとして信頼感があります。今年、テストで1000トンの蕎麦を実験的に日本に送り、北海道で「モンゴル そば祭り」を開催しました。とても好評でしたし、ゆくゆくは年間5万トンを輸出したい。

【飯島】日本は今、蕎麦の実の60%を中国からの輸入に頼っています。モンゴル産が安全でとても美味しいのは勿論ですが、輸入先が多様化すれば食料安全保障にもつながります。

【朝青龍】中国産だけに頼るのは日本にとってもよくない面がある。蕎麦畑があるのはノモンハン事件(日本の傀儡国である満州国とソ連の傀儡国であったモンゴル人民共和国との国境紛争)のあった土地です。そういうところに美しい日本の蕎麦の花を咲かせたかった。日本とモンゴルの平和のシンボルにしたいと思いました。