質問一発で社員をやる気にさせる経営者になりたい

「コーチングを受けて、仕事面だけではなく人生の軸ができた。複数の視点で物事を見る習慣がつき、バランスを大事にするようになった。常に自然体でいられるようになり、人に対しては以前よりずいぶん鷹揚になりました」

こう語るのは、製薬会社フェリング・ファーマの西條一社長。『コーチング・マネジメント』という本を読んだことがきっかけで、西條氏は2004年の秋、コーチ・トゥエンティワンのCTP(コーチ・トレーニング・プログラム)説明会に参加した。社員の力を伸ばすうえで、コーチングスキルを学ぶことが有益ではないかと思ったからだ。

そのセミナーで同社の安部昌伊コーチに出会い、安部氏の、人の話を聞く能力の高さと信頼の持てる人間性に触れ、その場でコーチを依頼、05年1月から、月3回、各40分の、電話でのコーチングが始まった。

「経営をするうえでも、自分の核となる本質を見つけることが第1だと思いました。気づいていない、自分の強み、弱み、価値は何なのか、安部コーチの力を借りて自分は何者かを徹底的に知りたくなったのです」(西條氏)

セッションを通して、西條氏の価値は「永遠の自己開発」であることが判明した。1度社会に出てからMBA、医学博士号を取得し、向学心が強く、興味の対象をとことん追いかける西條氏は、自分が変わり続けていくことに至上の喜びを感じるタイプ。そこで、自分の価値を高めること、経営者としてリーダーシップの質を高めるという2点にテーマをおき、人生と仕事の両面での目標実現を図っていった。

セッションを進めるうちに、西條氏の「永遠の自己開発」が、リーダーシップの場面で西條氏の内側に葛藤を生んでいるという事実が明らかになった。

「西條氏は持ち前の自己開発魂によって、各部門の専門スタッフと同レベルの知識を得ようとすることに力を割いていました。スタッフに任せきる、というよりも、ご自分の判断にこだわるところがあるように見えました。ところが、ある日のセッションで、部下を信頼し、権限を委譲したときにはじめて、リーダーとしての、大きな『絵』が見えることに気づかれました」(安部氏)