大会をソフト面で盛り上げる仕掛け

もっともハード面よりもソフト面、そこに関わっている人たちの数や思いを直接知ることにこそ意義があった。ファンゾーンをどんな思いでつくり、どういうことで人々を笑顔にさせるのか。また地元の人をどう巻き込んでいくのか。盛り上げていくのか。

ブライトンでは、地元のラグビースクール用として入場券500枚を確保し、提供した。でも、その数では少なすぎたとの声も聞いた。増田さんは「地元の人が(W杯の試合を)見られるような工夫もしなければいけないでしょう」と言うのである。

もちろん、地元の人々を巻き込みながらも、海外ファンをいかに楽しませるのか。「楽しむということはナンナノダ」。そのために開催地はどう準備しないといけないのか。そういうことを日本大会の開催地の担当者が、このW杯から学んだのである。

また釜石市の釜石東ローターリークラブ(RC)は、19年W杯の「親善大使」となる人材を育てたいとして、被災地・釜石の中学生に募集をかけ、6人を英国に派遣した。将来のまちづくりを担う若者にかける期待の大きさがよくわかる。

日本×スコットランドのグロスターの会場では、スタンドで釜石名物の大漁旗が振られた。中学生たちはW杯の真剣勝負に興奮気味だった。釜石のラグビークラブ「釜石シーウェイブス(SW)」のジュニアチームの甲子中学校2年生の新田壮吾くんは感激顔だった。

「すごくいい雰囲気です。感動しました。4年後、僕のまちにも、こんなビッグイベントがくるんですね」

この派遣団の澤田由佳子団長は「子どもたちにとっては、宝物になるでしょう。感動を(2019年の)釜石のW杯につなげてほしい」と期待していた。15年W杯の舞台の裏で、19年W杯の準備が始まっている。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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