3点目は情熱的にいくこと。情熱っていったいなんやねんという話になるわけですが、例えば小西さんが「伊右衛門」のクリエーティブをやられるときは、たぶん、世界で一番「伊右衛門」を好きになっているということじゃないかと思うのです。僕も自分が話をするコンテンツは、世界で一番好きです。少なくとも俺以上に詳しい奴はいない。これが情熱なのかなと。

だから3つ。1番目はスッキリ簡単にすること。2番目はストーリーにすること。3番目は情熱的にいくこと。これが言葉を考えるときの、ほぼすべてですね。

【小西】それはむしろBtoC的な考え方ですよね、僕が言うべきことだとイメージしていたので、とても驚きました。

【伊藤】BtoBの場合は、もともと同じようなレイヤーで仕事をしている人が多いので、グダグダ言っていても最終的には伝わる。そのなかで、より強烈に伝わるには? を考えればいいので、ある意味BtoCより楽だと思っているんです。

BtoCの場合は、一発勝負、1つの言葉で勝負をしなければいけないことってあるんじゃないですか。

【小西】それは多いですね。聞いていて思ったのは、実は共通点が多いんだなと。広告というと、BtoCと思われるのですけれど、BtoCの前に、BtoBがあるんです。まずクライアントを説得しなければいけない。ですから、今、伊藤さんがおっしゃったように、一緒にこの物語を描いたほうが楽しそうじゃないですか? と提示するんです。

資料作りの言葉でいうと、いつも2つのことを考えてます。1つはまったく同じなのですけれど、難しいことをやさしくすること。いつもクライアントには、製品にまつわる一番難しいこと、どうやって表現すればいいかわからないことを列挙してくださいと聞くんです。それを簡単にできたらその商品は売れます。簡単にならなかったら、それは商品の問題ですと(笑)。例えば、商品をどう伝えればよいかわからないときなんかは、ネーミング化するといきなり伝わったりするんです。

昨日、お酒を飲んでいて、とんでもなくでかいレモンサワーが出てきたのですが、メニュー名が「男前サワー」でした。単にレモンサワー大だったら興味はないけど、「男前サワー」と書いてあったら、なんだろう? と思って注文してしまう。すごく単純だけれど、相手の興味の一番先端には、何か簡単に伝わるものがあるはず。そこをつかまえにいきますね。

もう1つは相手の立場に立つこと。今、僕が話している「あなた」に、どう伝わっているのかを想像する。相手が課長さんだったら、彼は間違いなく部長に今日のプレゼンを上げなきゃいけない。だったら部長に上げやすいように、こう伝えてみてくださいと渡すと、「上げやすくなりました、ありがとうございます」となる。