2015年10月9日(金)

ミラカン? イチハン!? あんかけスパの謎

dancyu 2013年10月号

文・松浦達也 撮影・山口典利

11時の開店とともに、行列していた地元客が店内になだれ込んでくる。口々に「ミラカン、イチハンで!」などと雄叫びを上げる。名古屋の「あんかけスパ」専門店、「ヨコイ」「そ~れ」で見られる日常の光景だ。

きしめん、味噌カツ、モーニング。名古屋人の日常食は、他府県人にとって非日常食と言えるものが多い。

その最たるものが、「あんかけスパゲッティ」。ゆで置き麺に濃厚でスパイシーなあんかけソースがかかった名古屋ならではの1皿だ。

この独特の料理が名古屋人に熱狂的に受け入れられる理由を「ヨコイ」二代目の横井信夫さんはこう語る。「安くて味が濃くて盛りがいいですからね。名古屋のお客さんはお値打ち感と、味の濃さを大切にするんです」

なるほど。確かに名古屋には濃ゆ~い名物が多い。激辛の台湾ラーメン、甘い小倉トースト、とろりと濃厚などて煮、いずれも名古屋ならではの特濃な味わいだ。

専門店「そ~れ」の金岡晃弘さんも、あんかけスパの人気が県内に集中する理由を「味が濃いから」と笑う。

そしてあんかけスパの成り立ちは、この両店に濃厚な関係がある。あんかけスパのレシピを考案したのはヨコイの初代だが、メニューとして最初に提供したのは、そ~れだったというのだ。話が濃厚すぎるので、薄めるべく、少し整理しよう。

実はヨコイの初代は1961年に創業した、そ~れの共同創業者であり、このスパゲッティをつくり出したパイオニアだった。その後、同店を離れ、63年に自身の店「ヨコイ」をオープンさせている。

つまり、あんかけスパの礎を築いた両店のレシピは、ヨコイの先代の手になるものだったのだ。

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松浦 達也