ふつうは、そんな形で出てきた意見をそのまま個条書きにするかもしれません。もちろん、この思考法でもいいアイデアが出る可能性はありますが、「偏り」や「抜け」や「漏れ」が出るリスクも高い。このケースでいえば、思考が「アフター5の飲食系」という時間帯と行動内容に集中してしまいがちです。

フレームワークを活用すれば、こうしたことを避けることができます。最初に、「朝(出社前)」「午前中」「昼休み」「午後」「夕方」「退社後」のように横軸で職場の時系列を書いていきます。続けて、これとは別に縦軸に「オン(平日)」と「オフ(休日)」と書いて表の形にするのです。こうすると時間的な抜けや漏れが一切出ません。社員の活動の全部を押さえています。その結果、アイデアも偏りにくいのです。

「アフター5の飲み会もいいけれど、時間が長引きそう。ならば朝、出社前にみんなで職場か近くのカフェで15分くらい勉強会するなんて、どう?」「朝はみんなやっぱり忙しいから、いっそ、休日の午前、有志で集まるだけでもコミュニケーションの促進になるね」といった、それまでにない時間帯のアイデアもどんどん飛び出します。線を引いて、場合分けをしたフレームワークという「表」があれば、あとから参加した人も直感的に何のテーマで議論しているのか理解できます。

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論理思考・細谷式学習法●フレームワークの思考をクセづける

フレームワークという思考術は、いわば「守り」です。誰も気づかなかった斬新なアイデアを生み出すクリエーティブな「攻め」の装置というよりは、しっかり漏れなく情報を交通整理できる「型」のようなものです。

書店には、コンサルティング会社が頻繁に使うような、フレームワークの手法が紹介された本がたくさんあります。仕事をしていて、頭の中がモヤモヤしていたら、そうした本を開いて、使えそうなフレームワークを選びましょう。論理的な思考術や整理術を習慣にすると、「何を言いたいのかわかりにくい」「口下手」「人の話の重要ポイントを聞き逃してしまう」……といったコミュニケーション不全が軽減されるはずです。

ビジネスコンサルタント 細谷 功
1964年生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝入社。同社退職後、アメリカ、フランス、日本のコンサルティング会社を経て、2009年にクニエマネージングディレクター、12年からコンサルティングフェロー。著書に『地頭力を鍛える』『なぜ、あの人と話がかみ合わないのか』『具体と抽象』ほか多数。
(大塚常好=構成)
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