働く女性のロールモデルでありたい

――いま、女性活用の話が出ました。安倍晋三首相も「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」と宣言しています。どうすれば、女性の社会進出は進むと考えますか?

【バーバラ】目標数値を設定したことは、とても評価できます。目標が明確なら、そこに向かって、いろいろな手が打てます。ただし、あと5年しか猶予はありません。早く始めないとだめです。そんなとき、私は「正しい方向に行こうと思ったら、まずボールを蹴らないといけない」と主張します。幸い、日本はボールを蹴り出しました。結果として、30%にやや足りなかったとしても、ビジネスや行政、学術の世界で女性が存分に力を発揮できる環境になると思います。

社外取締役に女性を登用したと考えてみてください。女性特有の感性が業績を伸ばすはずです。なぜなら、一般消費者向けの商品の多くは女性が買っており、そこに向けたマーケティングができるからです。顧客が女性中心なのに、役員会に彼女たちを代表する人間がいないというのはおかしいと思いませんか。まして、日本は高い教育を受けている女性も少なくありません。そうした人たちを管理職にし、役員にしていくことで、その人を手本にしていくことが大切です。

――女性の場合、仕事と子育ての両立という問題があります。バーバラさんは、その2つを見事にこなしてこられたたわけですが、秘訣を教えてください。

【バーバラ】私は、アメリカでSECのコミッショナーを務めているときに長男を授かりました。87歳まで大学で働いた母に「とにかく恵まれた仕事なのだから辞めないように」といわれました。母は、私にとっての理想的な存在でした。だから、私も働く女性のロールモデルであり続けたいと考えています。彼女たちが輝けるような社会にしていくことが使命だと感じます。家族の助けもあり、出産のために12日間休暇を取り、13日目には証券業界団体のカンファレンスで講演したぐらいです。その後は、住み込みのベビーシッターを雇い、仕事に専念することができました。

仕事を続けてきたからこそ、大好きな日本で働かせてもらうこともできたわけです。東京電力とLIXILグループは、女性の私に白羽の矢を立てたのですから、非常に先見の明のある会社だと思います。それぞれの経営者である廣瀬直己社長も、藤森義明社長もすばらしい方たちです。企業のトップが決断すれば変化は起きます。東電はいま、間違いなく前進しています。LIXILグループも可能な限り手助けしたい。私は、これまでの経験を生かし、全力を尽くすつもりです。

【関連記事】
「東芝ショック」がアベノミクスの終わりを告げる
中国子会社破産! 「プロ経営者」藤森LIXIL社長の正念場
社外取締役が続々……企業統治強化へ圧力
法令順守だけがコーポレートガバナンスの目的にあらず
なぜ「粉飾決算」はなくならないのか