自主独立路線への成算に自信

新型車「ソリオ」を発表する鈴木俊宏社長。超高効率エンジンとマイルドハイブリッドを低価格で搭載。

前途を危惧する見方は多い。スズキくらいの規模で環境技術開発競争を勝ち抜くのは難しいと考えられているからだ。しかし、鈴木修会長は「自立して生きていくことを前提に戦略を立てたい」と強気だ。直近の26日、スズキはコンパクトミニバン「ソリオ」を発売した。その発表会でも鈴木俊宏社長は「(独力だけで)やればできるじゃないか」と、自主独立路線への成算に自信を見せていた。

会長、社長のコンビが見せた自信は、実は決して根拠のないものではない。VWと提携を決めた09年当時は、リーマンショックによる経済的な混乱と、当時は急速に進むと予想されていた車の電動化への対応という二重のプレッシャーに苛まれていた。それから6年が経った今日、自動車分野の研究開発のありようは大きく変わってきている。

まずは懸案であった電動化技術だが、どんなに素晴らしい技術であっても、劇的にコストが下がり、コモディティ化が進まない限り、本格的に普及することはないという当たり前のことが、ようやくはっきりしてきた。

EVやプラグインハイブリッドなど、充電電力で動く車については、あっという間に内燃機関車に取って代わると囃し立てる向きも少なくなかったが、バッテリーが依然として高いことや、電気化学について回る宿命的な制約を克服できず、現在も少数にとどまっている。ましてや、燃料電池車の現状や将来見通しは推して知るべしである。どんなに綺麗事を並べたところで、消費者の大多数が実際に買うのは安くて利便性の高い車だ。ベンチャー企業のテスラがEVで持て囃されたりと、高付加価値分野で成功しているケースはあるが、大衆商品の主流になるかどうかは、結局コストで決まるのだ。

充電電力によらない普通のハイブリッドはどうか。こちらはバッテリー搭載量が少なくてすむため、コスト的にはEVや燃料電池車よりずっと安くてすむ。その分野においては、今度はコモディティ化が進んでいて、独自技術を開発しなければ絶対に作れないというものではなくなってきている。