さて、もしユーロ側からもう助けないとさじを投げられ、昨年来の原油安で苦しむロシアも、上海株暴落に見舞われている中国も、余裕がないからと援助をしてくれなかったら、ギリシャはどうなってしまうのでしょうか。

まず、現在国内で流通しているユーロは早晩底をつき、公務員給与の支払いも国債の返済もできなくなります。しかし、ギリシャには通貨発行権がないので勝手にユーロを刷るわけにもいかないから、かつての通貨「ドラクマ」を再発行するしかないでしょう。でも、財政破綻した国の通貨に信用などないので、結果的に猛烈なインフレに見舞われます。インフレで貨幣価値が下がれば、国民の生活がいま以上に苦しくなるのは避けられません。

もっとも、インフレは通貨安を招くので輸出には有利。たとえばロシアは98年のデフォルト後、通貨ルーブルの暴落で安くなった原油の輸出が伸びたため、ほどなく経済は回復しました。韓国もアジア通貨危機で景気が低迷しましたが、サムスンなどの輸出産業は通貨ウォンの暴落を追い風として急成長し、やがて韓国経済を牽引するまでになったのです。ただ、ギリシャには主な産業がオリーブなど農産物輸出と観光しかないので、通貨安の恩恵はあまり期待できません。結局は従来どおり、ユーロ圏諸国の援助にすがるしかないでしょう。

駿台予備学校世界史科講師 茂木 誠(もぎ・まこと)
東京都出身。東大・一橋大など難関国公立大クラスを担当する。時事問題を世界史的な視点から解説する「もぎせかブログ館」を運営。著書に『経済は世界史から学べ!』『世界史で学べ! 地政学』ほか。
(山口雅之=構成 永井 浩=撮影)
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