クリエイティブ分野はイノベーションの宝庫

もう1つがクリエイティブ分野です。クリエイティビティはどの産業分野でも必要ですが、ここで注目しているのは、メディアコンテンツ、サブカルチャー、食やデザインなどの狭義のクリエイティブ分野です。

代表例の1つが、ボーカロイド(ヤマハが開発した音声合成システム)のキャラクター『初音ミク』でしょう。ユーザーは、初音ミクの音源とキャラクターを使って自作の曲を歌わせることができます。

それがネット文化と結びついてさまざまな広がりを見せ、いまやライブコンサートを開けば1万人が集まるようになりました。ホログラムでステージ上に生成されるバーチャルアイドルのライブを見るために、生身の人間がコンサート会場に集まるという現象は、新しい文化現象をつくったという意味でまさにイノベーションです。

さらに、初音ミクを主人公にしたオペラ「THE END」(作曲:渋谷慶一郎)が、日本やフランスで公演されて注目を集めました。登場人物するのは、ミクなどの映像キャラクターのみ。電子音楽とミクの台詞が中心なので、オーケストラもいません。まさに「オペラ」のイノベーションと言えるでしょう。

日本の食文化もイノベーションの宝庫です。たとえばラーメン。明治時代に、横浜や神戸などの中華街で提供されていた、中国の麺料理が発祥といわれています。これを日本人向けにアレンジする形で、さまざまなスープと具を組み合わせて豊富なバリエーションが生まれました。いまでは、中国を始め、欧米やアジアなど世界中に広がる人気料理になっています。

ちなみにオムライスやカツカレーも、外来の食文化を日本流にアレンジしたものです。このように、日本は世界からさまざまな食文化を取り入れ、それを固有のものと混ぜて洗練するというイノベーションを繰り返してきたのです。このダイナミズムが、日本の食文化にまれに見る多様性をもたらしました。

このように、クリエイティブ分野でも、日本はユニークなものを次々生み出している国です。日本人に創造性が足りないという認識は大間違いなのです。