2015年8月21日(金)

岩隈久志「被災地への思い」とノーヒット・ノーラン

スポーツ・インテリジェンス【第24回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
松瀬 学 まつせ・まなぶ
ノンフィクションライター

1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書は『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)など多数。

執筆記事一覧

松瀬 学=文
1
nextpage

石巻に置かれたサインボール

アメリカはシアトルから届いた朗報に、被災地での彼のサインボールを思い出した。

『岩隈久志 2013・11・23』。白いボールにはこう、黒字で書かれていた。米大リーグのマリナーズ岩隈投手が日米野球で帰国した際、米大リーグ機構(MLB)が主催したイベントに参加したときのものだった。

岩隈投手は先日、2001年の野茂英雄以来、日本人選手2人目となるノーヒット・ノーランを成し遂げた。日曜日、そのサイン入りボールが飾られている石巻市の石巻市総合運動公園野球場に電話を入れてみた。

職員の声が弾んでいた。「そりゃ、うれしいですよ。元楽天で活躍した、私たちのヒーローですから。被災地を思って、がんばっている姿に元気をもらっています」と。

東日本大震災以後、筆者は毎年「3・11」に被災地を車で回っている。昨年のその日、石巻市の市民球場をのぞいたら、偶然、岩隈投手のサイン入りボールを見つけたのだった。その野球場のバックネット裏のスタンドの一番上に立って眼下のフィールドを見れば、ホームベースのうしろに青色と赤色で「TOMODACHI」と彩られていた。

この球場は震災直後、支援物資の搬入搬出のための自衛隊駐屯地となり、芝生が全滅した。だが米大リーグ機構の『トモダチ』プロジェクトの一環として、2012年12月、上等な人工芝にはり直されてリニューアル・オープンしていた。

東北楽天から大リーガーになった岩隈投手がその後、球場を訪れ、野球指導もおこなっていた。岩隈投手は昨年11月、被災地の宮城県宮古市に誕生した草野球チームのゼネラルマネジャー(GM)にも就任した。アメリカにいながら、楽天OBとして、心では被災地の復興を思いやっているのだろう。

PickUp