NTTのフリーCFは3兆円突破! 一方、トヨタは

本業でのキャッシュの獲得を示すのが営業CFで、企業継続の大前提はプラスの確保だ。投資CFは設備投資や有価証券の取得、企業買収などに投じたキャッシュと、施設や子会社の売却等で得たキャッシュを加減する。さらなる成長を目指す企業は「出金超(本書では「△」で表示)」が一般的だし、リストラなど守りの経営に舵を切ると「入金超」になったりするものだ。

つまり、本業でいくらのキャッシュを獲得し、そのキャッシュを元手に将来の成長に備えて設備投資やM&A(企業の買収・合併)などにどのくらいのキャッシュを投じているのかという、企業の大方針が一目瞭然というわけだ。投資CFにおける出金超過額が、営業CFで獲得したキャッシュを上回るようであれば、金融機関などから新たに資金を調達する必要が出てくるが、それを示すのは財務CFである。新規の借入が借入金の返済を上回れば、入金超となる。財務面が盤石で、財務CFにおける出金が株式配当だけだったりすると出金超が毎年度続く。

本書を参考に入金超を「○」、出金超を「△」として、各企業の経営成績を見比べてみるのはどうだろうか。

その際、営業CFと投資CFの実際の金額を見比べることもポイント。これは各社のフリーCFを見ようというもので、プラス金額が多ければ多いほど、企業が自由に使えるキャッシュが潤沢であることを示す。

過去5期累計でNTTが獲得したフリーCFは3兆円を突破。意外なことに、トヨタ自動車のフリーCFは赤字である。もちろん、営業CFは毎年度「○(入金超)」だが、それを上回る投資活動に出金しているためである。日立製作所とパナソニックは、設備や事業の売却などリストラを進めたことで、投資CFが「○(入金超)」の年度があったことから、フリーCFが黒字になっているとみることが可能。したがって、両社については営業CFもそうだが、投資CFの推移に注目したい。出金超過額が増額傾向を示すようになったら、守りから攻めの経営に転じたと判断していいだろう。

売上高や営業利益(営業利益率)、当期純利益も大切な経営指標だが、企業のキャッシュの流れを示すCF計算書の活用は企業分析に欠かせない。

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