Q2 同僚を信用できない
【守屋さんの答え】

転職を繰り返したり、風見鶏のように派閥を変えたりする。そんな人間は信用できないという気持ちはわかります。戦国時代末期に著された『荀子(じゅんし)』には「命に逆らいて、君を利す、これを忠と謂(い)う」とあります。命令に逆らってでも君主の利益になる行動が「忠」である。そんな『荀子』の教えが、ひとつの組織に忠義を尽くすことが美徳である、という考え方の源流ではないかと思います。

しかし『荀子』以前は違いました。孔子が生きた春秋時代は、人材の流動性が極めて高い社会でした。孔子自身も士官先を求めて中国全土を旅しています。『論語』には孔子の弟子である子游の言葉として「君に事(つか)えて数(しばし)ばすれば、ここに辱めらる。朋友に数すれば、ここに疏(うと)んぜらる」とあります。主君や友人に諫言や忠告ばかりしていると嫌われてしまうから、ほどほどにしたほうがいい、という教えです。

また、『礼記(らいき)』には「人臣たるの礼は、顕わには諫(いさ)めず。三諫(さんかん)して聴かざれば、則ちこれを逃(さ)る」とあります。この「三諫」は、君主の過ちを三回諫めてもダメなら、その国を去るのが礼だという教えです。状況を変えることができないなら、さっさと職を変え、派閥を移ったほうがいい。現代に置き換えれば、そう理解できます。

日本でも、戦国時代にたびたび主君を変え、最後は伊勢・津藩の初代藩主となった藤堂高虎は「武士たるもの七度主君を変えねば武士とはいえぬ」という言葉を残しています。

こうした歴史を考えれば、能力を発揮するために主君を変えることは、信用を損ねる行為とはいい切れません。