リーダーシップだけではリーダーになれない

【柳井】僕は現実を知らない限り、リーダーシップは発揮できないと思っています。だから入社した人は全員が現場に入り、そこで働く人、我々の製品を使う人がどういう意味を感じて使っているのか、市場がどういうふうになっているかを肌で感じることが大事です。組織はリーダーばかりでは成立しません。僕はリーダーシップとフォロワーシップの2つを持たないと真のリーダーシップは発揮できないんじゃないかと思います。会社組織の中ではほとんどの人がリーダーであると同時にフォロワーです。優れたフォロワーシップのある人でないと人はついていかないでしょう。世界中の人と一緒に仕事をするうえでもリーダーシップとフォロワーシップを併せ持つことが重要です。

【グラットン】その通りだと思います。海外の人たちは日本企業といえば、常にピラミッド型を想像します。つまり、上のリーダーが指示し、その下は言われたことをするというイメージです。しかし、階層的な手法はグローバル化すると通用しなくなります。

【竹内】階層組織の対比としてあるのがフラットな組織ですね。ファーストリテイリングはどちらですか。

【柳井】組織をフラットにして大企業病と戦うリーダーシップが絶対必要だと考えています。いつも言っているのは、僕のようにしないことだ、ということ。僕のようにしたら絶対に失敗するし、カリスマは必要ない。フォロワーシップとリーダーシップの両方を備えたリーダーが「グローバルワン・全員経営」でやる。この方法しかないと思っています。グローバリズムが強くなればなるほど、あるいは従業員が増えれば増えるほど、自分は他の人とは違うという意識が強くなる、あるいは自分の国は他の国とは違うという根拠なきローカリズムがはびこるのです。

それを克服するには職階をできるだけなくし、全員が経営者としてお互いを尊重することです。複雑な世界ではあるが、それを受け入れて自分と他の人が共存するための方法とはどうあるべきか。その市場で物を作り、売るためには何が必要なのか。ローカルな市場について考えると同時にグローバルな視点で考えるという矛盾することをやっていくことが我々の成長にとってキーになると思っています。

※本稿は2014年6月17日にファーストリテイリンググループ社内で行われた対談を編集部の責任において要約・再構成しました。