自分の足で調べなければ気づかないこと

「大前研一のガラガラにっポン」(テレビ東京系)というテレビ番組を作っていたときには全国各地を取材して回った。そのとき意外と重要なのが、タクシーの運転手からの情報だった。十和田湖から八戸までタクシーを使ったら、運転手が「この辺のリンゴ農家は皆、台風が来るのを待っているんですよ」と言う。聞けば台風でリンゴがダメになると補償金が出るのだという。「去年の台風ではリンゴが壊滅的な被害を受け年末にまとまった補償金が入ってきた。そういうときしか農家はお金を使ってくれない。あれで正月にハワイやゴールドコーストに行った人も多い。また台風来ないですかね」。

1時間半の長距離乗車で運転手もいろいろな話をしてくれた。「八戸で漁港を見てこようと思っているんだけど。あの辺はロシア漁船が来ているらしいな」「よくご存じですね。ロシア船は表の漁港に入れないので、山の裏側の漁港に来てます。八戸の漁師は危険な北洋漁業には行かない。ロシア人に卸させているから、最近は楽になっているんですよ」。地元漁師に取材して確認すると、漁は完全にアウトソーシングで、「ロシア人の船は鮮度が問題。来年からは冷凍庫を完備したオレたちの船を貸してやろうと思っているんだ」とアッケラカンと白状した。

あるとき、日本海側の漁港で境港の漁獲高が1位になったというニュースを聞いて、疑問を持った。日本海全体で魚の量が増えて他の漁港でも軒並み漁獲高がアップしているなら理解できるが、統計を見ると境港だけが増えている。どう見ても不自然だ。境港は朝鮮半島に近い。これは北朝鮮の漁船と洋上交換をしているのではないか――。そういう仮説を立てて現地に乗り込むと、やはり漁師は餌は持たずにドルを抱えて出漁し、大漁旗を立てて帰ってくる光景にたどりついた。