もっとおかしいのは地方自治体

国民の生活全般を規定する基本法というフレームワークの観点から言えば、現行憲法には抜け落ちている項目が多い。

現行の憲法は、そもそも第二次大戦後に占領軍が起草したものである。明治憲法を下敷きにしながらも、フランス革命のときの人権宣言、それを踏襲したアメリカ独立宣言の流れを汲んでいる。それゆえに憲法では国家と個人の関係については書かれているが、生活基盤である地域のコミュニティと個人の関係、市町村や都道府県と個人の関係については何も書かれていない。そもそも、税金を徴収する市町村や都道府県と個人の関係性が憲法で定義されていないのもおかしい。もっとおかしいのは地方自治体だ。第8章で定義されているのは地方公共“団体”で、地方政府ではない。ドイツのように地方政府に3権と徴税権を与えている国とは大違いだ。江戸時代から続く日本の悪しき中央集権の元凶がここにある。

家族については第24条で少し触れられているだけで、家族の定義や家族の責任、国家と家族の関係、親の責任や義務など、肝心なことは何も書かれていない。国家で唯一富を生む主体である企業についても何も書かれていない。政府はあくまで富の再分配機関であり、富をつくりだす企業がなければ国は成り立たないのに、だ。国家は企業に対してどういう考え方を持っているのか、産業の育成にどうかかわってくるのか、国と企業や産業の関係性について規定してしかるべきだが、それらの点について、現行憲法は一切言及していない。

世界や他国との関係についても、現行憲法では何も語られていない。前文や第9条で「国際社会において名誉ある地位を占めたい」とか、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」と書いてあるが、それはほとんど敗戦直後の反省の弁に等しい。世界有数の経済大国になった日本として国際社会にどう向き合うのか、世界に対してどういう働きかけをしていくのか、憲法で謳うべきだ。