ビジネスで生かす、視点を変える発想法

ある企業が、塩の売り上げを大きく伸ばしたこんな話がある。商品の売り上げを伸ばすために会議をし、マーケティングを展開し、販売促進を行い……としているところで、ひとりの女性社員が「塩が出る穴を大きくしたら使う量が増えるのに」と言ったという。なるほどと塩が出る穴を改善したところ、売り上げが伸びたというもの。

つまり、誰もがいかに売るかをやっきになって考えている中で、その人は消費を増やすことに視点を置きかえたというわけだ。真相はともかく、会議やマーケティングと発想が凝り固まったところに、少しだけ違った視点を持ち込むことで大きく飛躍できる発想例だといえるだろう。

同様によく聞かれるのは「アフリカに靴を売る」話だ。アフリカで靴を履かない地域をまかされた営業が、「その地域では靴を履かないから、靴は売れない」と考えるか、「靴を履かなかった地域だからこそ全員が買ってくれるかもしれず、大きな市場となりうる可能性がある」と捉えるかというものだ。今まで履いていなかったのだから、もし履きはじめたときに初期参入をしておくことは、大きな利益につながるだろう。「裏返しも考えてみること」が、より大きな可能性を生むかもしれないのだ。

スティーブ・ジョブズは携帯電話からボタンをとり去り、レコード会社やアーティストが嫌ってきた音楽のダウンロード配信を、iTunesでビジネスとして成立させ、音楽販売ビジネスの形態を根本的に変えてしまった。ハード面を優先に考えてきたコンピュータや機器の世界で、コンテンツやデザインなどソフトの側面から考えて必要なハードに落とし込むことで新たな発想が生み出せたのだ。

変なのか、違う視点なのか……ひとつの物事を表からも裏からも見て発想に生かすことは、ビジネスでも大きく生かせるはずだ。

[脚注・参考資料]Derek Sivers: Weird, or just different? TED India 2009, Nov 2009

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