利根川の現場では長さ230メートルを掘り進める。従来の建機では5~6日かかる作業だが、ICT建機では早ければ2日で完了する、と彼は続けた。

アトスの渡邊直也社長。36歳。「ICT建機」を積極的に導入している。

「工期が短くなって受注を増やせるだけでなく、手の空いた熟練オペレーターを他の現場に回せる。これが当たり前になれば現場は様変わりしますよ」

ICT建機の活用で油圧ショベルで1.5倍、堤防の法面形成などの難しい作業を行うブルドーザーでは3倍の速さで作業が進んでいるそうだ。また、熟練オペレーターがICT建機のアシストを受けると、さらに作業効率が上がることも分かってきた。

「特にブルの精度になると、熟練オペも勝てない。操作が自動アシストされるので、本来なら何度もやり直して仕上げる箇所が一度で終わるんですから」

アトスが導入したのは、ICT建機だけではない。コマツの「情報化施工」の新サービス「スマートコンストラクション」を活用し、工事開始時の測量工程からサポートを受けている。

この堤防工事ではレーザースキャニングによる高精度測量を行ったが、風の少ない場所であればシリコンバレーのベンチャー企業「スカイキャッチ社」のドローンを利用し、空中から測量を行って3D図面を製作することも可能だ。ICT建機のレンタル料は既製品の3倍にもなるが、人員の削減と工期の短縮、それに伴う受注増によって、レンタル料を補って余りある効果があるという。

アトスに建機を貸し出すコマツレンタル・スマートコンストラクションプロジェクト室の西原研一が話す。

「いまのコマツにとって、ICT建機を最大限に活用する彼らのような建設会社は貴重な存在です。我々が測量や施工の中身にまで関わることは大きなチャレンジ。スマートコンストラクションはまだまだ始まったばかりのサービスなので、先進的なお客様と一緒に育て上げることが不可欠だからです」