しかも日本は官民を合わせて見たとき、世界で最も多くの対外資産を持つ純債権国である。日本の対外純資産は14年末時点で366兆円と、24年連続で世界一である。このため、ギリシャ問題のような経済危機が起きると、世界の投資資金が円に集まり、円高が発生する。つまり、日本政府が発行している日本の円は、ECBが発行するユーロより、米国政府が発行する国債より信用があるということだ。対外純債務がGDPを大きく超えているギリシャとは、この点がまったく異なる。

日本では政府の税収を担保する家計の金融資産も、15年3月末で1700兆円以上と莫大だ。財務省は「政府債務というツケを次代に残すな」というが、家計の保有資産もいずれ将来世代に移転されることになる。日本人ほど将来世代のことを考えている国民はいない。

日本政府の債務は、円建てで発行されている。このため返済を求められれば、日銀でお金を刷ることにより、すぐに返すことができる。

同じことはギリシャにはできない。ギリシャの通貨はユーロで、借金もユーロ建てである。ユーロはECBが発行しており、ギリシャ政府はECBにお願いしてお金を貸してもらわなければ、政府の債務を返済できない。そのためには、ドイツなど他のユーロ加盟国を説得しなければならない。そこも日本とは決定的に違うところだ。

もちろん、日銀で刷ればよいといっても、あまりお金を刷りすぎればインフレになってしまうが、今の日本はインフレではなくデフレなので、そこを心配する必要はない。

そもそも、市場が日本国債が返済不能となることを心配しているのであれば、高い金利を約束しない限り、誰も日本国債を買ってくれないはずである。

ところが、日本国債の発行金利は、15年7月初めの10年国債で、年率0.5%前後であり、15%近いギリシャ国債とは比較にならない。同時点の米国10年債、イギリス10年債はどちらも2%台である。それだけ日本国債は、マーケットで返済の確実性を信頼されている。