NHKのBSプレミアムで放映中の「キャシーのbig C――いま私にできること」は、がん患者の周囲にいる人、当事者の心模様を理解したいと願う人には、格好の作品です。アメリカでは数々のテレビドラマの賞を受賞、すでに世界21か国で放映された大ヒット作。このテーマをこれだけ笑えるストーリーに仕立てた製作陣の手腕は、さすが。コメディ大国アメリカならではです。

舞台はミネアポリス。主人公のキャシーは50前後とおぼしきブロンド美人。高校教師で、中学生らしき反抗期の1人息子と、ちょっと精神年齢の低そうな困ったちゃんの夫と3人で、暮らしている。実の兄は、インテリなのにヒッピーのようなホームレス生活をしています。

『がんが自然に治る生き方』(ケリー・ターナー著 プレジデント社)

つまりは、家族のだれとも腹を割って話せる関係にはない。そんな折、背中のできものを診せに皮膚科を訪ねたキャシーをおそったのが、恐ろしい宣告でした。

「あなたはメラノーマのステージ4です」。医師はいった。「あとどのくらい生きられるの? 1年?」「おそらく」と医師。「1年半?」「可能性はある」「3年から5年?」「そう望みたい」

キャシーが衝撃の事実を伝えようと帰宅すると、待っていたのは、友達を家によんでへべれけになった夫の醜態でした。彼女はここで、夫のほおをひっぱたいて自分の話をするのではなく、「1人になる時間がほしい」としばしの別居を決意します。まずは、自分の殻に閉じこもろうとするのです。

次に、1人で暴走しはじめます。よくいえば、自分の抑圧を解き放とうとする。庭に大きな穴を掘って夫が酒をこぼしたソファーを燃やす。サッカーの合宿にいこうとする息子を追いかけて、おもちゃのガンを持ってバスに朕入、「ママと一緒に過ごしましょう」と息子を連れ戻す。兄をつかまえては、「おねがい、これでちゃんとした生活をして」とお金を渡そうとしてはねのけられ、ケンカする。