歴史あるヱビスと黒ラベルのその先

今年2月、サッポロは黒ラベルを4年ぶりにリニューアルした。しかし、黒ラベルはコアなファンに支えられている商品だ。そのため、原料の吟味や、デザインの微修正など、商品の骨格を変えないように気を付けた。リニューアル後の反応は良好で、西日本でも取り扱いは増加した。

サッポロビール社長
尾賀真城
(おが・まさき)
1982年慶應義塾大学卒業後、同年旧サッポロビール(現サッポロHD)入社。東京、大阪、北海道で営業やブランド戦略にかかわる。取締役常務執行役員を経て2013年3月より現職。

ブランドの捉え方は、ヱビスも同様だ。プレミアムビール市場に各社殺到するが、先駆けであるヱビスを送り出したサッポロには矜持がある。

「プレミアム市場は活性化している。このジャンルはまだ伸びる市場だ。だから、もう一度、ヱビスが何をできるかだ。基軸のヱビスビールがしっかりしているからいろいろとチャレンジもできる」(尾賀社長)

コアなファンを離さず、新たな顧客を獲得するのは、営業部隊の腕の見せどころでもある。

関東で展開するスーパーマーケットチェーンのオオゼキは地元の消費者に合わせた商品展開を行う個店主義を掲げている。また、チラシを細かく撒き、売り場も毎日つくり替える。ビール類の陳列も同様だった。

しかし、各社からビール類の派生商品が数多く出るようになり、オペレーションが大変になった。オオゼキの酒販部門チーフ・ビールカテゴリーバイヤーの丹智幸氏は、全店共通の「基本棚割」をつくることにした。顧客のニーズに応える多品種少量陳列をより効率的に行うためだ。

そこでパートナーに選ばれたのがサッポロビール広域流通本部首都圏営業統括部の荒木進之介氏だ。荒木氏は全39店舗のビール類担当者全員と密なコミュニケーションを心掛ける。だが、サッポロだけを特別扱いはしない。それでも黒ラベルは棚に出しておけば、きちんと売り上げは伸びていく。

「黒ラベルは、現在オオゼキ様全店で販売していただき、4年ぶりのリニューアルによる効果もあり4月の売り上げは前年比202%となりました。しっかりと店頭で販売いただくことで、まだまだ伸びる商品です」(荒木氏)

ヱビスの強さも実感している。

「とくに催事でのヱビスの強さというのは、他のプレミアムビールよりも人気が高く、際立っていますね。やっぱりヱビスは歴史があるので、根強いファンがいらっしゃいます」(丹氏)