1000円で買える万年筆を作ってほしい――。会社の指示を受けてから5年、2013年に子ども向けの万年筆として「カクノ」は誕生しました。海外の小学生が万年筆を使っていることはわかっていたので、国内の小学生にも必ずニーズはあると考えたわけです。しかも価格を1000円にすれば、気軽に万年筆を手にする人も増える。そうして購買層を広げていくことで、万年筆の使いやすさをもっと伝えたかったのです。商品名は筆記する「書く」と六角形の「角」に由来しています。

プロデュースした人 斉藤真美子(パイロット 営業企画部)

小学生が使うために、机の上から転がり落ちないことを何より重要視してデザインしていきました。万年筆は机の上から落ちてしまうとペン先がむき出しのときに破損してしまうだけでなく、たとえキャップを付けたままでも、インクが飛び散ってしまうことがあります。だから軸もキャップも鉛筆のように角が多く転がりにくい六角形にしています。それだけでなく、キャップにはストッパーの役目を果たす小さな突起をつけました。

六角形の軸に対し、グリップ部分は三角形になっています。子どもの小さな手が万年筆を持つには三角形のグリップのほうが手に馴染むし、握りやすい。しかも三角形にすることで、手に持つと親指、人差し指、中指が自然に正しい位置に収まるようにすることもできる。こうして最終的には、転がりにくさだけに特化した角張った三角形ではなく、書いたときの心地良さを感じられる角に丸みを帯びた三角形を採用しました。