デメリットは雇用にかかる必要経費の増加

しかし、このようなワークシェアリング制度を導入することにはデメリットもある。例えば、短時間正社員の雇用にかかる非賃金コストの増加問題だ。

「確かに短時間正社員を雇用すれば、必要経費は増えます」と言うのは、青果貿易会社を経営するケース・ヴァルスター氏だ。フルタイム正社員が1人いれば足りる職位に複数の短時間正社員を雇えば、その人数分、職業訓練や事務手続き等の追加費用がかかる。

それでも、同氏は短時間正社員を歓迎している。「ワークシェアリングを行えば、1人の従業員が病気や怪我で長く休むときでも、他の従業員が少しずつ仕事を肩代わりし、仕事は滞りなく回っていきます。短時間なので代理の候補者を見つけるのもそれほど難しくはない。むしろ、優秀な社員が様々な家庭の事情で離職するリスクを、この制度で回避できるメリットは大きい」。つまり、ワークシェアリングをリスク分散として捉えているのだ。

一方、継続的に現場の状況を把握しなければならない管理職的な職位には、最初からフルタイム正社員しか雇わない。「事業に著しく影響が出る場合は、会社の判断でパートタイム雇用を拒否できます。だから問題はありません」とヴァルスター氏は言う。

ランチはデスクで。ムダな時間は省き労働生産性アップ

では労働生産性の問題はどうだろうか。短時間正社員制度は、当事者間の引き継ぎが上手くいかなかったり、必要なときに担当者が不在だったりと、様々な非効率が起こる可能性が高い。実際、オランダの時間当たりの労働生産性は、同制度を導入後、あまり伸びていない。09~13年の時間当たり実質労働生産性上昇率は0.4%とOECD平均(0.8%)を下回っている。比較までに、日本の労働生産性はOECD加盟国中20位で、同割合は1.5%である(日本生産性本部『日本の生産性の動向2014年版』)。

当の短時間正社員たちも、このような働き方が非効率を生みやすいことは自覚している。また、フルタイム正社員から短時間正社員に移行しても、それに比例して仕事量が減少するわけではないことから、作業が追いつかないことも多々ある。顧客への対応が遅れるなどの不便は、もはや日常茶飯事といえよう。

だが、オランダ人に生産性を上げる気がないかというと、決してそうではない。むしろ契約時間内でより多くの仕事をこなすために、時間の使い方にはシビアだ。さらに、オランダでは全労働者の約50%(EU統計局)を短時間労働者が占める。彼らは仕事量とそれに必要な時間を常に意識しながら作業している。なかには定時で帰宅するためにランチブレークを切り詰めて仕事をする人もいる。人材派遣サイトMonsterが12年に行った調査によると、オランダ人労働者の29%が昼休み中も食べながら仕事を続けているという。