「全国制覇」は×
「地域で一番」が○

【鈴木】ではなぜ、われわれのグループは、製造に手間のかかる上質な商品を提供することができると思われるでしょうか。

セブン-イレブン専用工場(武蔵野フーズ)でつくられる「金の食パン」。1斤250円と高めだが、甘くてふっくらした食感で人気に(埼玉県)。(時事通信社=写真)

セブン-イレブンの場合、総店舗数は約1万6000店近くあり、日々の生産量は膨大です。弁当やパン、総菜などのデイリー商品の生産を担うのは共同開発するベンダーと呼ばれるメーカーの工場です。その専用工場率は90%以上で、他チェーンとは圧倒的な開きがあります。この高い専用工場率が質の高さを支えているのです。

ではなぜ、専用工場率が高いのでしょう。それは創業以来続けているドミナント(高密度多店舗出店)戦略によります。一定エリア内に集中出店しながら店舗網を広げる方式で、現に出店していない県も残っています。ドミナント方式なら、 出店エリア近くに専用工場をつくっても経営が成り立つのです。

集中出店は、商品の質や鮮度を高められると同時に、顧客に対する心理的な影響も大きいといえます。地域でのセブン-イレブンに対する認知度がある時点からブレークし、売り上げのカーブが急速に上がるからです。実際、仙台エリアもセブン-イレブンは最後発ながら、今は圧倒的なシェアを持っています。

石垣のように、基礎からきちっと積み上げているからこそ、上質さと手軽さを両立させた商品を投入し、新たな需要を掘り起こすことができるのです。セブン-イレブンの平均日販の高さは、基礎からの積み上げと未来を起点にした発想の産物にほかならないということです。

鈴木敏文(すずき・としふみ)
セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEO。1932年、長野県生まれ。中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年イトーヨーカ堂入社。73年セブン-イレブン・ジャパンを創設して日本一の小売業に育てる。2003年イトーヨーカ堂およびセブン-イレブン・ジャパン会長兼CEO就任。05年セブン&アイ・ホールディングスを設立し、現在に至る。
(勝見 明=構成 坂本道浩=撮影 時事通信社=写真)
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