「上質または手軽な商品」は×
「上質かつ手軽な品」が○

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「質」と「手軽さ」の両立がヒットを生む

【鈴木】「どこにもない商品をつくる」と述べましたが、これを別の角度から見てみましょう。商品開発には、上質さを追求する方向性と、値段の安さなど、手軽さを追求する方向性があります。上質さと手軽さはトレードオフの関係に見えます。トレードオフというと「二者択一」と訳され、どちらか一方をとり、もう一方は切り捨てるというとらえ方が多いようですが、これは正しい理解ではありません。

上質さか、手軽さかのトレードオフの場合、上質さなら上質一辺倒ではなく、そのなかにどれだけ手軽さをちりばめるか、逆に手軽さなら手軽さ一辺倒ではなく、どれだけ上質さをちりばめるか、そこに価値が生まれます。ポイントは上質さと手軽さという2つの座標軸で考え、手つかずの「空白地帯」を見つけることです。すると、どこにもない商品が生まれます。

店頭で抽出する「セブンカフェ」。2013年1月のサービス開始からわずか半年あまりで1億杯を突破した。

例えば、大好評をいただいているセブン-イレブンの淹れ立てコーヒー「セブンカフェ」です。レギュラーサイズ(150ミリリットル)が1杯100円という手軽さのなかにも徹底して上質さを追求しました。

2013年1月から各店舗に導入を始め、7月には累計販売数が1億杯を突破。コンビニの持ち帰りコーヒーの空白地帯を開拓したことで、「日本一コーヒーを販売する店」を目指すことが可能になったのです。

 
鈴木敏文(すずき・としふみ)
セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEO。1932年、長野県生まれ。中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年イトーヨーカ堂入社。73年セブン-イレブン・ジャパンを創設して日本一の小売業に育てる。2003年イトーヨーカ堂およびセブン-イレブン・ジャパン会長兼CEO就任。05年セブン&アイ・ホールディングスを設立し、現在に至る。

 

(勝見 明=構成 坂本道浩=撮影)
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