20年近く現代アートの現場を見続けてきて、最近、強く感じるのは、現代アートに興味を持ってくださる方が増えている、ということです。現在、銀座のエルメスで「L_B_S」展を開催中の名和晃平さんのオープニングには600名以上の方々が詰め掛けたと聞き、びっくりしていますし、とてもうれしい気持ちになっています。海外の知り合いから香川県にあるベネッセアートサイト直島には「どうやって行くのが一番良いか?」という質問を受けることも最近増えています。

石鍋さんが才能を刺激し、それに答える井上隆保さんの作品。<br>
「桃太郎 - 偶然という確率 - 」(2008)courtesy of MORI YU GALLERY
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石鍋さんが才能を刺激し、それに答える井上隆保さんの作品。 「桃太郎 - 偶然という確率 - 」(2008)courtesy of MORI YU GALLERY

興味を持ってくれる人が増えたのはいいのですが、あるアーティストがしみじみとつぶやいた言葉が忘れられません。それは「個展で作品を褒めてもらえるのはうれしい。雑誌の記事に取り上げてもらえるのも感謝している。けれども、自分がプロのアーティストとして自立するためには、作品を買って下さる人が必要で、作品が売れなかったら生きていけない。僕が考える評価、というのは作品を買っていただくことなんです」というものです。そうなのです。アーティストは霞を食べているのではありません。生活して行くためには、作品をお金に替えることが大事なのです。

つまりコレクターの存在というのが本当に大切なのですね。ただ一般的に「コレクター」というと、なんだかステロタイプなイメージだけが先行していて、実像がつかみにくいかもしれません。例えば欧米でコレクターといえば、アートに興味を持ち、自分のコレクションを作り上げるために作品を収集するコレクターがいます。

潤沢な資金があれば、アドバイザーや専門のキュレーターを雇い、投資的な側面も補完しながら、世界的なコレクションを作るチームを作り上げたりします。「ブルーチップ」と呼ばれる、世界的なアートマーケットに認知されているアーティストの作品を中心にコレクションし、さらに特定のアーティストの作品を多く収集したりします。あるいは、大きな予算がなくても、アート雑誌を定期購読し、自分の価値観で新しいアーティストの作品を買い、それらを売ったり買ったりしながら自宅やオフィスに飾り、十分に楽しむ人々がいます。もちろん、そうした人々も投資的側面を忘れてはいません。

一方、自分のコレクションを作るけれども、どちらかというと、アーティストを支援すという目的が強いコレクターもいます。パトロン、パトロネージュですね。自分自身の眼や直観を信じ、作品に対して共感や感動した特定のアーティスト作品を収集し、そのことによってアーティストを支援してゆくタイプのコレクターです。応援の形にはいろいろあって、作品は数人で共同購入したり、アーティストの個展のお手伝いやプロジェクトのスタッフになったりと、あらゆる面でボランティア活動を行います。おおざっぱですが、どちらかというと前者は作品に興味があり、後者はアーティストに興味がある、と言えるかもしれません。

最近、注目が集まっている「ワンピース倶楽部」を主宰している石鍋博子さんにお話を伺いました。石鍋さんはおそらく後者、パトロンタイプのコレクターだと思います。石鍋さんが主宰するワンピース倶楽部は「最低1年に1作品(one-piece)を購入することを決意したアートを愛する人達の集まり」で、本来は孤独だったコレクターの収集活動を仲間と楽しく、知識や情報を共有しながら作っていこうという団体です。