えびフィレオ以来、独自の商品開発はほぼ行われていない

原田体制の問題点は、短期の利益志向が強すぎたことだ。創業経営者だった藤田と異なり、プロの経営者である原田は、常に米国本社を向いて仕事をしていた。藤田社長時代の末期に2.5%だった米国本社へのロイヤリティは、原田時代に3%に引き上げられた。コスト削減のため藤田が育てたベテラン管理職を社外に放出したことで、開発力も衰えた。原田時代の新商品は海外からの導入ばかりで、05年の「えびフィレオ」以来、日本独自の商品開発はほぼ行われていない。

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原田改革3つのステージ(写真=時事通信フォト)

藤田時代には温情主義で、契約が切られることはほとんどなかったフランチャイズ店との関係も変わり、外形的基準により一方的にフランチャイズ契約が打ち切られるケースが相次ぎ、訴訟に発展した例も出た。

現場では客の回転数を上げ効率性が追求された結果、スタッフの負担が過大となり、笑顏が失われ店内の清掃も行き届かなくなって、客離れに至った。原田体制の後半、日本マクドナルドは求心力を失い、人的資源は大きく劣化してしまったように見える。

最悪の状況で経営を引き継ぐことになった現CEOのサラ・カサノバは、原田体制の被害者といえる。しかし、復活の芽はある。

日本マクドナルドには、かつて藤田が育てた人材が社内外に残っている。原田の辞任とともに、これまで一大勢力をつくっていたコンサルティング系メンバーが減り、原田時代に放逐された元社員たちが本社に戻りつつある。

現在、マクドナルドでは野菜を多く使った「ベジタブルチキンバーガー」など、健康志向の新商品を開発・投入している。これは離れてしまった顧客、なかでも女性とファミリーを呼び戻す狙いがはっきりした戦略だ。また地域別の事業制を採用し、各地で現地の好みに合わせたローカル商品の開発も始めており、米国流の全国一律のマス・マーケティングから距離を置き始めている。これらはブランドイメージの再構築が必要な現在の日本マクドナルドに適した戦略といえる。

赤字に転落した今も、マクドナルドには多くの熱烈なファンがいる。衰えたりといえども、3カ月で日本の全消費者の3分の1が訪れる、日本最大の外食チェーンである。同社が現在進めている「日本化」改革をやり抜けば、必ず顧客からの支持を取り戻せると私は見ている。(文中敬称略)

(構成=久保田正志 図版作成=大橋昭一 撮影=宇佐見利明)
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