2015年7月31日(金)

「夏鹿」っておいしい! 知られざる赤身肉、期待の星

dancyu 2013年8月号

文・柴田香織 撮影・大平裕

牛じゃない、馬じゃない、もちろん豚じゃない、深紅の素敵な赤身、それはもしかして夏鹿です。「夏の鹿って、実は旨いんだよね」というシェフたちが繰り広げる夏鹿ワールド、知られざる赤身肉、期待の星をご賞味ください。

去年の夏、ある店で鹿のローストを食べたのが事の始まりである。「鹿って夏も食べられるんだ」と軽い気持ちで頼んだ夏鹿が、衝撃的だった。その1、食べるそばから体がポカポカ温まり、疲れと暑さでよれた体がシャンとした。その2、塊でしっかり食べても、胃もたれ一切なし。その3、おいしい。そのすっきりとしたキレ味は、マグロの赤身的爽快感。

鹿といえば、脂がのる狩猟シーズンにワインで煮込み、ザ・濃厚な赤ワインと合わせる冬のジビエと思っていたけれど、夏鹿の爽やかさときたら、まったく別の食材だ。これはもしや夏のニューフェイス!? 何年後かには、夏は鰻より鹿だよね、という時代が来たり……はしないか、いやいや来るかも。そんな予感を抱き、おいしさの秘密を知りたいと思ったのだ。

夏鹿には自然のパワー漲る野趣がある

牛とも馬とも違う、赤い味、そして後腐れのない爽やかな後味。夏鹿を幾度か食べると、その思いは確信に変わる。これは何なのか? 猟師と深いパイプをもち、日本各地の夏鹿を知るシェフにその理由を尋ねた。秋冬になればジビエ専門、夏も猟師限定の夏鹿を供する「パッソ・ア・パッソ」の有馬邦明さんは、「おいしい夏鹿は、環境がつくる」と言う。魚にいい漁場があるように、すべての鹿がおいしいわけではない。有馬さんは、自分の目で確かめた餌の豊富な山の鹿しか使わない。「春から若い木の芽や若草をたくさん食べ始めるので、その自然な味わいが魅力。本州鹿なら、おいしくなるのは7月~9月ですね」

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柴田 香織