課題を解くためのPOINT2:相関とは
「散布図」でコストをかけるべき優先順位を判断

▼もっとも効果的に予算を使うには

もっとも成功確率の高い販促策を探す場合のように、予算というお金の制約のなかで、より効果的な使い道を探し出し、コストをかけるべき優先順位を決めることは、あらゆるビジネスで必要に迫られることでしょう。

こうした場面では勘と経験に頼りがちですが、例えば「使うお金」と「効果」の結びつきの強さ加減を数値化できれば、客観的に比較分析することが可能になります。

そこで使える手法が「相関」です。2つのデータ同士の結びつきを「相関関係」といい、相関の大きさには強い・弱いがあって、これは一方のデータがどの程度、他方のデータの動きに(比例的に)連動しているかで決まります。

図を拡大
Excelで「相関係数」を求める

相関関係の強さは「相関係数」と呼ばれる指標で示されます。相関関係の強さは数値化することができます。そんな難しいことができるのか、と思われるかもしれませんが、理論を厳密に理解することはともかく、計算自体はExcelを使えば平均や標準偏差を求めるのと同じく簡単にできます(図参照)。

計算した相関係数が±1に近ければ近いほど、比例関係が強くなります。相関の有無を判断する明確な基準は決まっていませんが、経験的に相関係数が-1~0.7、0.7~1の間だと強い相関があると考えられています。相関係数が+1なら完全な正の相関、つまり2つのデータの増減方向が同じ、±1なら完全な負の相関、つまり増減方向が逆の関係にあります。0なら全く相関はありません。

例題のケースで仮説をつくる目的は、配達遅延の理由を明らかにすることにあります。遅延の理由となりそうな要因を洗い出して仮説を立てると、次のようになったとします。

仮説1: 顧客からの注文点数が多いとき、全品揃うまで出荷されず遅延が生じている。
仮説2: 経験値の少ない配達担当者の効率が悪く、オーバーフローが生じている。
仮説3: 全体の作業量が多すぎて、処理しきれずに遅延が生じている。

図を拡大
(上)仮説2に関するデータの散布図(下)仮説3に関するデータの散布図

3つの仮説の相関係数を算出してみましょう。遅延した配達1件ごとに、仮説1の指標として注文点数、仮説2は担当者の習熟度に関する社内評価制度の点数を、仮説3は受注時の総物流個数を置いて、それぞれの指標と配達遅延日数との相関係数をExcelで算出してみます。

その結果は注文点数が-0.08、業務習熟度が-0.88、総物流個数が0.44になり、仮説2がもっとも相関が強い。すなわち、担当者の業務習熟度がもっとも配達遅延に関係がありそうだとわかりました。