2015年7月24日(金)

なぜ近畿大学は「クロマグロ完全養殖」に世界で初めて成功したのか?

dancyu 2013年7月号

文・尾関友詩 撮影・堀隆弘

マグロが網に衝突しないよう、生簀はより深く、より大きく改良されていった。常に泳ぎ続けるマグロ同士が衝突しないよう、円筒形の生簀を使うことで、ようやくゴールが見えてきた。生簀に移した稚魚の、1カ月後の生存率は、1998年までの4年間で2.3%から55.7%まで上昇した。

そして日韓W杯が開催された2002年、近大の生簀で生まれ育ったクロマグロが、ついに産卵する。研究開始から32年、ライフサイクルを一巡させた完全養殖の成功だ。

大島実験場で30年以上もクロマグロの養殖研究に携わる岡田貴彦さんは、この業界では有名なマグロのエキスパートだ。しかし、まだまだ謎は尽きない。たとえば、産卵させるために安定してメスを確保したい事情があるのだが、目視でオスとメスの区別はできないのだという。

「もうちょっとマグロと向かい合っていたら、オスとメスの違いがわかるようになるはずなんですけどね」

そう言って笑う岡田さんたちの研究は、今後も続いていくのである。

2013年4月。大阪・梅田にオープンした複合施設「グランフロント大阪ナレッジキャピタル」に、近大は「近畿大学水産研究所」を出店させた。ここは新たな研究施設ではない。クロマグロをはじめ、近大の養殖魚を誰もが気軽に味わえる、れっきとした飲食店だ。脂ののった刺し盛りの皿には、近大マグロの「卒業証書」カードが誇らしげに添えられている。

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尾関 友詩