2015年7月24日(金)

なぜ近畿大学は「クロマグロ完全養殖」に世界で初めて成功したのか?

dancyu 2013年7月号

文・尾関友詩 撮影・堀隆弘

大卒のお笑い芸人というのはもはや珍しくもなんともないが、大卒のマグロと聞けば興味を引かれるのではないだろうか。

大阪市内から特急に乗り約3時間。本州最南端の町、紀伊半島の串本町(和歌山県東牟婁郡)に近畿大学水産研究所の大島実験場がある。世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功した施設だ。ここで生まれ育ったマグロは、「近大マグロ」の名前で大卒のマグロとして親しまれている。

そもそもなぜ、近畿大学がマグロの養殖を行なっているのか。話は戦後間もない、1948年までさかのぼる。

当時、日本の漁獲高は落ち込み、国民は食糧難に苦しんでいた。そこで衆議院議員を務めていた世耕弘一(せこう・こういち)は、海を大きな「畑」と捉え、魚を収穫できるようにしようと考えた。その研究拠点として設立されたのが、近大の前身である大阪理工科大学の白浜臨海研究所、のちの近畿大学水産研究所だ。

翌1949年、近大が設立されると世耕は初代総長に就任し、養殖の研究をサポートし続けるのである。

当初は失敗の連続だったが、研究を重ねた末、1965年に世界で初めてヒラメの種苗生産(養殖をするために卵をかえし稚魚を育てること)に成功する。以後、ブリ、カンパチ、シマアジなどでも成功し、近大は養殖のパイオニアとしての地位を確立していった。

卵から稚魚、若魚、成魚へ。そして産卵。こうしたライフサイクルを人間の手で一巡させるためには、その魚の生態を深く理解する必要がある。どうすれば死なずに育ち、産卵するのか。水温やエサ、生簀の大きさなど、最適な環境は魚によってまちまちだ。近大の研究者たちは、それらを1つずつ解明していったのである。

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尾関 友詩