──野村ホールディングスなど、いくつかの日本の金融機関が救済役を買って出ました。1980年代の「ジャパンマネー」の世界進出を彷彿とさせますが、当時の失敗を糧に、今度はうまくやれるでしょうか。

「日本の金融機関が世界の表舞台で再び活躍できることを印象づけた」という意味で、投資家にプラスの印象を与えたと思います。海外の金融機関と提携したり、出資をする機会は、今後もたくさんあると思います。

「日本は金融立国になれるのか」という議論も出ている。でも、本質的に問われるのは、「海外で活躍できるか」ではなく、まずは「国内の金融市場を次のステージにもっていけるか」ではないでしょうか。国内でやるべきことの一例が、地方の金融機関の再編です。達成できれば地方活性化にもつながりますが、縦割り行政などの弊害もあって、なかなかうまく進んでいないのが実情だと思います。

──経済のグローバル化で新興国でのいわゆる「デカップリング(非連動)」が起きず、世界同時不況が懸念されています。

そうですね。でも、私はむしろリカップリング(連動)によって全体が安定するのではと考えています。世界がひとつの村になることは悪いことばかりではない。ひとつの場所で起きたことが全体に波及してしまうのは確かですが、リスク分散効果もあるし、いろんな場所から資本が集まるというメリットもあります。資源配分もやりやすいでしょう。

政治経済学者のアルバート・ハーシュマンが言ったように「資本主義は平和のために許される」のです。王国ばかりの時代は戦争が絶えなかった。そこで「各国が一緒に事業をやれば戦争はできない」との発想で資本主義が生まれたのです。国と国が経済的につながれば平和になるということです。

私はアナリストとして常に、今目の前にある現実という材料を使い、人と違った視点から物事を見据えるように心がけています。そうすることで本質が見え、今後取るべき対策も見えてきます。「アメリカがダメだから、日本もダメだ」などと一面的な“負け犬心理”に陥るのではなく、先を見据え、自分でコントロールできることとコントロールできないことを認識して、コントロールできることを中心に行動するしかありません。今回の金融危機の余波はこの先も続くでしょうし、日本でも実体経済は悪くなるでしょう。だからこそ大切なのが新しい物価体系のなかで創意工夫を重ねること。原油が高いという事実は仕方がないのだから、原油高という状況下で何をすべきかを考えるのです。

たとえば、いま日本の農地の1割は使われずに耕作放棄されている。世界的に食糧が高騰し、農業に注目が集まっている今、こんな無駄はない。なのに、改革を行って有効活用しようという動きが鈍いのはなぜでしょう。農業法人や「農地REIT」などをつくり、活性化させることを考えてはどうでしょう。