ユダヤ人の無遠慮さを皮肉った、こんなエスニック・ジョークもある。

「街角にアメリカ人、ロシア人、中国人、イスラエル人が立っていた。ひとりの記者がやってきて、この4人に聞いた。『すいません、肉の不足についてご意見を』。アメリカ人は『不足って何?』、ロシア人は『肉って何?』、中国人は『意見って何?』と答えた。イスラエル人の答えは、『すいませんって何?』だった」

遠慮を知らないユダヤ人が議論すれば、忌憚のない意見の応酬となり、本質的でシンプルなアイデアが生まれる。相手の顔を立てるために反論を控えることもある日本人とは大きな違いだ。

あなたの中にある“ユダヤ”を探せ

ビジネスのアイデアを思いついたら、躊躇せずにとにかくスタートさせるのもユダヤ人の特徴といえる。星野さんは、ユダヤ人経営者のフットワークの軽さにアマチュアっぽさを感じることすらあったという。

(右)スターバックス中興の祖 ハワード・シュルツ「平凡な人生という最悪の運命を避けるには、挑戦するしかない」 写真=時事通信社(左)ブルームバーグ創業者 マイケル・ブルームバーグ「考えることは重労働だが、省くと何も手に入らない」 写真=Getty Images

「知人のユダヤ人経営者が、サイドビジネスとして海外からワインを持ってきて試飲会を開きました。普通はホームページや注文用紙などの準備が必要ですが、その方は準備なしで試飲会を開き、『私は早くお金を見たいのに、みんな注文してくれない』と嘆いていました。この方だけでなく、ユダヤ人経営者には、思いついたらとりあえず試すというタイプが多いですね」

アイデアを準備なしで試せば、失敗も多くなるだろう。しかし、ユダヤ人にとって失敗は恐れる対象ではない。石角さんは、その理由をこう解説する。

「ユダヤはもともと何も持っていなかった民族なので、失敗してもゼロに戻るだけ。失敗すれば土地を失いかねない他の民族とは失敗の受容度が違います。またユダヤ教は、祈りの方法などにも表れているように、“our God”ではなく、“my God”。集団の行事として祈る宗教と違い、個人がバラバラに祈ります。自分は神と直接つながっているので、失敗してまわりから非難されようが関係ないという感覚が強い。神に見放される恐怖に比べれば、他人に見放されるのは怖くない。私も改宗後は人の評価が一切気にならなくなりました」