課題を解くためのPOINT2:平均値の活用
“ざっくり”現状分析、将来予測をする

▼販売予測や市場規模もわかる

例題では「配達遅延による補償金の出費が目立つ」と各所から指摘を受けています。

ここでまず把握すべきことは、配達遅延がどの程度になっているかを知ることです。みんな遅れているといっていますが、実際にどのくらい配達に時間がかかっているのかを数字で明らかにするのです。もう1つ把握すべきは、配達遅延によって生じている補償金の出費の大きさです。こちらは会社にとって損失がいくら発生しているのか、金額を明確にするわけです。

まず平均配達遅延日数を計算してみましょう。配達遅延日数とは、ここでは配達距離や在庫状況から算出された標準配達日数(3日)との差とします。

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例題の表A

例題の表A(図参照)から、配達遅延日数の合計は153日で、配達件数の合計は200件なので、前者を後者で割って平均配達遅延日数は約0.77日と算出されます。

次に、平均遅延補償金額を計算すると、遅延補償金額の合計45万9000円を配達件数合計200件で割って、2295円と算出されます。なお、この例題では遅延補償金単価を1日あたり3000円という設定にしています。

このように平均値を算出してみると「配達1件あたり2295円も遅延補償金を支払っているのか」と問題の大きさがざっくりと浮かび上がります。

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活用例1:現状分析 活用例2:将来予測

さらに算出した平均値は、工夫の仕方によっていろいろな使い道があります。たとえば配達している製品の単価が1個3万円で、粗利は9000円だったとします。そこで粗利に占める平均遅延補償金額の割合を計算すると25.5%になります。つまり粗利の4分の1以上を遅延補償金が食い潰している計算になり、問題は非常に大きいと認識できるようになります。

また、配達件数が変動したときに全体の遅延補償金額がどう変化するのか、平均遅延補償金がわかっていればシミュレーションすることができます。もし配達件数が200件から300件に増えれば、2295円に300件をかけて、約69万円も遅延補償金が必要になるとわかります。

遅延補償金を平均という1つの値に固定し、それに掛け算する配達件数を変数として考えると、簡単に合計値を算出でき、会社へ与えるインパクトの大きさをシミュレーションできます。

平均は誰でも知っている初歩的なツールでないがしろにされがちですが、将来の販売予測や市場規模の大きさをざっくりと知りたいときなど、さまざまな活用ができます。例えば達成すべき予算額を製品1台あたりの平均利益額で割り算を行えば、何台売れば予算に届くか、という予算達成の可能性を探ることもできます。