日本人と給与水準は同じがベスト!

サッポロビールのベトナム工場も2011年から稼働している。5年もしない間に、ベトナム有数の人気ブランドに成長し、現地に出向中の日本人ビジネスマンからも「日本と同じ味がベトナムで飲めるとは!」と好評だが、味以上に好評なのがサッポロガールだという。

ビールの宣伝を担当する女性といえば、セクシーなコスチュームのバドガールが有名だが、あのサッポロ版と考えてもらいたい。ビールのラベルをイメージさせる黒と金の衣装で、ビールを運んできてくれる。ベトナムは東南アジアでも美人が多いことで有名だ。

私は酒を飲まないのでわからないのだが、同行者に聞いたら、美しい人が持ってきてくれるとビールが美味しくなるという。ビールは簡単に味が変わる不思議な飲み物だ(笑)。キャンペーンガールでなくても、まじめで働き者のベトナム人に日本に働きに来てもらう機会が増えてもいいのではないか。

高齢化が進む日本では、これから200万人以上の介護職の不足が予測されている。ブローカーなどが暗躍して、安い賃金でフィリピンやインドネシアなどから日本に働き手を連れてこようとする動きもある。しかし、安いから連れてくるという発想では、治安などの面で日本社会も混乱を招くだけだ。

私は、海外出身者でも日本人と同じ仕事ができるなら、同じ金額を支払うような仕組みが必要だと思う。実際にその方向で働きかけを強めている。ちなみに、日本の介護福祉士の給与は月額15万円程度で、いろいろな資格をとると月額約30万円程度となる。月額15万円は、ベトナムの中央官庁の局長クラスの給与水準にあたるのだが、ベトナム人の現役医師にこの話をしたところ、私を雇ってくれないかと言ってきた。この調子でいけば優秀な人材が、日本に集まるのは間違いない。

ベトナムの経営者と接していて、非常に感心するのは、「仕事がほしい」「仕事の相談にのってほしい」と言ってこないことだ。日本の多くの経営者の場合、私がパーティで名刺交換などをすると数日後に「実は折り入ってご相談がございまして……」と電話をしてくる経営者が多いのだが、ベトナムの経営者からは一切ない。ベトナムが栄えれば企業も潤うと考えているのか、「環境をよくしたい」「インフラを整えたい」など国全体の展望については雄弁に語るが、自分の相談事は一切しない。日本人がどこかでなくしてしまった大切な何かが、ベトナム人の心にはあるのだ。

(写真=時事通信フォト)
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