2015年7月10日(金)

「人間同士、説明すればわかってもらえる」はウソである

PRESIDENT 2014年3月17日号

福田俊之=構成 的野弘路=撮影 Getty Images=写真
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伊藤忠商事の社長就任時は約4000億円の不良資産処理を手掛け、中国大使就任後は微妙な日中関係の間に立たされた丹羽宇一郎氏は、関係者の利害が交錯する世界でどのように信頼関係を構築してきたのだろうか。

金を追っかけたら、金は逃げる

仕事というものは、価格とか技術力による品質というよりも「人間力の勝負」、つまり人格と人格の戦いであると思います。長期的にビジネスを成功させていくためには、自分の会社のみならず、相手の会社にもプラスになるようにしなければならない。フェース・ツゥー・フェースでぶつかり合って、お互いに信頼関係が生まれて「この人となら」と思えたときから、ビッグビジネスへの機会が生まれるのです。

元伊藤忠商事会長・前中国大使 
丹羽宇一郎

1939年、愛知県生まれ。62年名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事入社。98年、社長に就任。2004年会長。10年6月、民間出身者としては初めて、中国大使に就任。12年12月退官。

とくに、これからリーダーになろうとする人は、相当に人間性が問われることを覚悟したほうがいい。平社員のころのように、目の前の仕事だけをひたすらやっていればいいというわけではありません。新規事業に参入するとか、海外でプロジェクトを立ち上げるとか、そうした大きなビジネスを展開する局面では、「どんな人間がやっているのか」ということが重要な要素になるので、相手と信頼関係を築けなければ、仕事になりません。また、部下と信頼関係を築くことができなければ、上司としても失格です。

ただ、相手と信頼関係を築く能力は、一流大学を出たからといって培われるものではない。私が商社時代、部下に取引先と信頼関係をつくるために言い続けてきたことは「お金儲けのために仕事をするんじゃない」「金を追っかけていったら、逆に金は逃げるぞ」ということです。例えば、この商品はなかなか故障しないで長持ちするとか、相手に都合のよいセールストークを並べて売れるだけ売りつけて、あとは知らん顔では、一時的に売り上げが上がったとしても、長続きしません。まして、もしそれが嘘八百を並べていたとわかったら、もう二度と買ってくれない。相手の信頼を裏切ってはどうしようもない。いったん信用を失ったら、いくらお金を出しても信頼は取り戻せません。

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