第二の理由は世界的に金融緩和の方向に進んでいること。今年に入って、インド、スイス、デンマーク、トルコ、カナダ、シンガポール、ロシア、オーストラリアが、それぞれ利下げに踏み切った。

ハイ・イールド債ファンドには、欧州のハイ・イールド債を組み入れ、かつ通貨選択型という仕組みを取るものが多い。通貨選択型ファンドの魅力は、高金利通貨を介して低金利通貨の債券を買うと同時に、為替の売りヘッジを掛けることで一定の金利差収益が得られる点にあるが、金融緩和が進んで高金利国の金利水準が低下すると、この金利差収入が目減りする。

特に欧州のハイ・イールド債市場にとっては、ギリシャのデフォルトリスクも頭痛のタネだろう。先の選挙で急進左派連合が勝利を収めたが、これによって緊縮財政反対の勢いが強まれば、これ以上、EU、ECB、IMFからの金融支援が受けられなくなる恐れが浮上する。

ギリシャの経済規模は小さく、悪影響が世界マーケットに波及するリスクは低いが、ギリシャがデフォルトしてユーロから離脱すれば、ハイ・イールド債市場のようなリスクの高いマーケットは、リスクオフの動きを強める。つまり、ハイ・イールド債の価格が急落するリスクをはらんでいる。

当然、ハイ・イールド債を組み入れて運用している投資信託の運用成績にとっても、今後、これらの材料が悪影響を及ぼす恐れがある。

現時点で米国や欧州のハイ・イールド債を組み入れて運用するファンドを保有している個人は、原油価格の動向とギリシャ問題の行方を注視するとともに、保有ファンドの資金流出入状況を把握しておくこと。運用環境の悪化で資金流出が続きそうなときは、早めに解約の検討をすることをおすすめする。

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