2015年7月3日(金)

「サワー」はまさかのダジャレ出身! 居酒屋トリビア8

dancyu 2013年7月号

文・松浦 達也

居酒屋の「居」ってどういう意味?

「居酒屋」の「居」を辞書で引くと「いること。座ること。」(『大辞林』)とある。まさにこれが「居酒屋」の意味だ。1998年発刊の『酒場の誕生』などによれば、江戸時代、酒を買いに来たはずの酒屋で、客は居ながらに試飲をし、そして座りながら一杯売りの酒を飲むようになったという。これだから酒呑みは困る。酒屋自身も空の樽に渡した板を椅子代わりに腰掛けさせるようにして、店先で飲む「居酒(いざけ)」を後押しした。商売人、恐るべし。ちなみに江戸中期には、茶屋や茶漬け屋など、その後居酒屋という業態に影響を与えるさまざまな飲食店が繁盛した。その理由は、1657年の明暦の大火以降、町が拡張し、人口が流入し続けた結果、「単身者向け飲食店」のニーズが高まったからとも言われる。

一番古い居酒屋ってどこ?

酒屋からの発展形のほか、煮物や酒を扱った煮売酒屋なども居酒屋の原形とされる。文献に登場する小売酒屋系の居酒屋では、18世紀の「豊島屋」(神田鎌倉河岸)や「四方」(神田和泉町)あたりが有名どころだ。また現在も居酒屋として営業する店では、下谷「鍵屋」が酒屋として安政3(1856)年に創業、千住「大はし」は明治10(1877)年に牛肉専門店として開業し、ともにその後居酒屋に業態転換した。そして生粋の居酒屋として明治38(1905)年、ついに神田「みますや」が創業! いずれ劣らぬ深い味わいと、唯一無二の存在感。頬は緩むが、背筋は伸びる。

江戸時代の居酒屋では豆腐が大ブーム!?

屋号「豊島屋」。この酒屋は元文年間(1736~41年)の改築を機に、店頭で焼いた特大豆腐(馬方田楽)を1本2文という安値で売り出した。このリニューアルが大当たり! 1992年発刊の『居酒屋礼讃』によれば、武士や商人ばかりか「乞食も押しかけた」というほどの大繁盛となる。時をほぼ同じくして、前出の「四方」も片見世商いだった赤味噌を肴として出すように。豆腐や煮豆など、豆が江戸中を席巻し、1782年には今も残る名著『豆腐百珍』が刊行された。豆は永遠の酒の友。もはや夫唱婦随ならぬ「酒唱豆随」の関係である。

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松浦 達也