02年を頂点に離婚件数は減少

厚生労働省の「人口動態統計の年間推計(12年)」で離婚件数の推移をみると、男女雇用機会均等法が施行された1985~11年の婚姻件数が70万件台をほぼ維持しているのに対し、離婚件数は16万件前後から20万件台に増加。さらにさかのぼって47年と11年(推計値)を比べると、その傾向はより顕著だ。93万件強→67万件弱に減った婚姻件数に対し、離婚件数は8万件弱→23万件強と3倍近くに増えた。

この傾向を映し出すように、最近では「離婚式」なるイベントもある。離婚式プランナーとしてイベントを仕掛ける寺井広樹さんが言う。

「年に50~60組ほどの需要があります。9割が夫からの申し込み。男性は、通過儀礼として対外的な“ケジメ”が必要なのかもしれません。最初は20代が中心でしたが、ここ数年は40~50代も増えてきた。熟年離婚の増加のせいでしょうか」

費用は10万~30万円。主に専用の会場で友人らを集め、仲人ならぬ“裂人(さこうど)”を立て、カエルの木槌に2人で手を携えて結婚指輪を叩き潰す儀式を行う。さすがに親族は同席しない。ブーケトスもあるという。

しかし、前述の統計では離婚件数がここ10年ほど微減傾向にある。寺井さんも実感しているように、02年の約29万件を頂点に毎年少しずつ減り続けているのだ。長期のトレンドかどうかはまだ議論の余地があるが、「夫にとっての脅威」と井戸さんが指摘した「年金分割制度、3号妻の特典」が登場したにもかかわらず、データをみる限り、それが離婚件数を押し上げるバネにはなっていない。

国内経済の停滞に続く震災・津波・原発事故の暗雲が、生活と人生の岐路となる離婚に対して日本人全体を少し慎重にさせているようだ。

前出の井戸さんによれば、「離婚したら2人とも貧乏になりがち」。晩婚が増えている現在、経済面での不安も従来以上に高じているのだ。40~50代で離婚すると、先々30~40年の余生がある。おまけに、年金が出るまで20年ほど待たねばならない。妻が独り身で一からやり直すとしたら、いくら「3号妻」といっても、年金分割制度はそれほど期待できるものではないのである。

(宇佐見利明=撮影)
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