相手の論破よりもしなやかに改善を

2002年4月1日、立ち上げて2年4カ月余りのオークションサイト「ビッダーズ」で、落札時にかかる成約手数料を、落札額の5%から2.5%に引き下げる、と発表した。参加料と出品料は、従来通りに無料。出品者が自分の出した品へのアクセス数を確認できる機能などを追加することも、明らかにした。同時に、国内の主要プロバイダー11社が、それぞれの会員に対し、「ビッダーズ」の利用を促すキャンペーンを展開することも、公表された。

DeNA取締役会長 南場智子

1カ月前、大きく先行していた競争相手が、それまでの参加料に加えて出品時と成約時にも課金する、と発表した。その前夜にニュースが流れると、すぐに主な幹部が会社に集まり、逆に値下げすることの検討に入った。翌日、大手プロバイダーの首脳4人を訪ね、協力の約束を取り付ける。

スピード感が物を言う業界で、鮮やかな動きだった。ただちに、利用者のシフトが起きた。両社のグラフをみると、2本の線が近づき、相手の背中がみえた、と思った。だが、シフトは4カ月で終わる。相手も次々に策を打つ。底力を知った。満40歳のときだった。すぐに思い直し、ショッピングサイトの創設を進める。さらに、携帯電話でのオークション「モバオク」へと進化させていく。

起業する前にコンサルティングのマッキンゼー日本支社にいたときから、米国で起きるITビジネスの動きを、チェックしていた。その一つが、米国で勃興し、日本にはまだなかったオークションサイト。97年正月、大手プロバイダーの社長に「立ちあげるべき」と熱弁を振るったら、「そんなに言うなら、自分でやればいい。応援するよ」と切り返された。「あっ、そうか」と頷いた。

「インターネットで、売りたい人と買いたい人の距離を、ぐっと縮め、日本に流通革命を起こそう。そういう遺伝子を、世の中に広げたい」。コンサルタント仲間2人を口説き、思いを共有できる人間を誘って会社の創設メンバーが揃う。社名は「遺伝子」から連想したDNAに、ネットビジネスに付く「e」を埋め込んだ。1999年3月、有限会社ディー・エヌ・エーが生まれ、8月に株式社化して社長に就任した。